|
「物の量と運動の量は不変に維持される」、という言葉は太古からしばしば使われてきた。力と運動の関係を始めて定量的に観測したのはデカルトである。彼は物体と物体とが衝突するときの様々な実験をくり返し、物体を起動する力と時間とを掛けた値は、質量と速度を掛けた値に等しいことを見いだす。 F・t=m・v
ここで F:力、 t:時間、 m:質量、 v:速度。
この力と時間の相乗積を“力の衝撃”と呼んだ。そして彼は言う「宇宙における運動の量は常に一定である」。
半世紀後にライプニッツは、デカルトの説に異論を挟み、力の測量は“力と高さの相乗積”で表すべきであると提唱する。 F・h=m・v2
ここで h:初速度vで真上に投げた際、物体が上昇した最上点までの距離。
<注> 上記の式はライプニッツの誤りで、正しくは F・h=1/2・m・v2 であると現在では解されている。
この時代ヨーロッパでは、活力の大きさを表す際上記のどちらが正しいか、はげしい論争が行われた。約50年後にダランベールが、この問題は言葉の争いに他ならないとして決着をみる。即ち、時間を考えると速度に比例し、距離を考えると速度の二乗に比例するのであることを証明する。現代では前者を運動量、後者を運動エネルギーと呼んでいる。
またニュートンは、彼の力の法則をより完全に証明するため、絶対時間、絶対空間の存在を明らかにしようとした。 彼の時代には,恒星が絶対静止ではないかと考えられていたので、それを根拠に絶対運動を明らかにしようと企てたが、その企ては失敗に終わっている。
さて、本書では現在よく使用されている慣性の法則や運動エネルギーなどに対し、これまでの常識とは異なった、エーテル大気の存在を意識した、別の視点から論考していくことになる。その呼び名を累積エネルギーと呼ぼう。
この概念は極めて理解しにくく説明しにくいので、まず始めにここでは概略だけを記述しておこう。
(1)慣性(惰性)の法則の慣性そのものを、累積エネルギーと呼ぶ。そして物体の慣性は累積エネルギーで計量すべきであると主張する。物体に力がなんら作用しないとき等速直線運動を継続できる理由は、この累積エネルギーを有しているからであると解く。したがって二つの物体が全く同一速度であるならば、全く同一の累積エネルギーを有することになる。
(2)運動エネルギーや慣性力が、主に大地に対して相対的なものであるのに対し、累積エネルギーは絶対空間に対して絶対的な量である。即ち、累積エネルギーの量がその物質の絶対速度に比例する。よって宇宙には絶対静止が存在することを明言する。
(3)物体が光速を越えた瞬間光を放出し、累積エネルギーが0(ゼロ)となり、その時その物体は絶対静止状態となるのだと説明する。故に光速を超える物質は存在しないことが分かる。
(4)累積エネルギーの量は、次式で表わされる。
E=m・v2 ここで E:累積エネルギー, v:絶対速度
<累積エネルギーが E=m・v2 である理由>
デカルトは物体どうしが衝突する際の実験から「力積」を求めた。ライプニッツは物体を真上に投げた時の実験から「活力」を求めた。そして現在一般に使用されている運動エネルギーとは、物体がその速度に達するまでに要したエネルギーで表現される。しかしこの物理概念は、その速度を有する物体の持つ真のエネルギーとは異なるのではないかという疑問が、私の物理理念の中の一つに長期に亘り存在していた。そして私は最終的に次のような結論に到達した。
物体の慣性力とは、その物体が等速直線運動している際に有している力で計るべきであって、速度の変化が生じている時であってはならない。となると、速さ(v)の物体の有する真の慣性力とは、質量と速さと距離の相乗積で表わすのが妥当ではないか。又等速直線運動している際の単位時間での移動距離は速さに正比例するので速さが倍になれば距離も倍になる、結局数式で表わすと速さの二乗となり上式を得る。
*定義* このように物体が等速直線運動している状態で、その物体が有している絶対エネルギーを本書では“累積エネルギー”と呼ぶ。
そして、累積エネルギーとは、絶対空間に対し絶対速度を表わしており、これまでの運動エネルギーとは区別する。
ここに記した二つの新概念は、相対性理論を批判する際には速度座標空間が用いられ、物体が光速に達したとき光を放射するのだという説を論証する際には累積エネルギーが用いられる。
|