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14 相対性理論の誤解 |
移動している船の乗客Aから見ると、静止している船の乗客Bが移動いているように見える。しかしBの人から見るとAの人が移動いているように見える。この様な見る立場による相異をどのように理解するかが相対性原理の始まりである。
しかし若者は、このあたりまえの事を「何故だろう」と考えた。この何故だろうという素直な発想こそ、科学への第一歩につながるのである。 そして若者は家に帰って今日した体験をまとめてみる。 (1)Aなる人が静止している。Bなる物が1時間に4kmで移動していたとする。するとAから見て、Bは時速4kmで移動していることは容易に理解できる。 (2)次にAなる人はBなる物と同一速度(時速4km)で歩き始めた。このときAから見てBは移動してないことは、今日の体験から明らかである。故に(1)と(2)の両方を満足させるには次の式が成立する。 Aから見た速度 = Bの速度 − Aの速度 = 4km−4km=0 (3)更に、もしAが反対方向に時速4kmで歩いた場合、上式は成立するだろうかと若者は考えた。そして計算をした結果時速8kmという結果を得た。 Aから見た速度 = 4km−(−4km)= 8km (4)翌日若者は、川辺に行き、反対方向に向かって歩いたとき、大木は間違いなく8kmで遠去かることを確認した。よって(2)で得た計算式は正しいと結論した。そして、Aから見たBの速度を相対速度と命名する。 (5)ただし以上の内容は、大地が絶対静止であると仮定したものである、という前提条件も明記しておいた。
今、図14−1 に示すように、静止した大地をS0なる慣性系とし、速度(V)で走る電車をS1なる慣性系としよう。外で静止している人Aに対する慣性系S0の座標軸をx、y とし時間軸をtとする。列車の中の人Bは椅子に座り慣性系S1に対し静止し、その座標軸をx‘、y‘ とし又時間軸はt’である。時刻t=0のとき、二つの座標軸の原点は同じであるとする。 Aの座標系から見てBの位置はt1秒後にはV・t1=a だけ移動しいおり、t=0のとき、 x=x‘ であるから x= x‘ +V・t1 Bの座標系から見てAは x‘=x − V・t1 となる。 また、yは変化無く、時間は同一なので y=y 、t=t‘である。 即ち、どちらの座標系でも “距離=速さ・時間” という法則は成立する。 以上のような座標変換をガリレイ変換と呼び、このガリレイ変換では各慣性系で用いた座標軸の種類と単位は同一である。全ての空間を瞬時に見渡せる観察者Wがいるものと仮定し、Wから見て二つの慣性系は、原点の位置は平行移動するがそれ以外の物理量の単位などが同じであるということである。 (1)次に、ニュートン力学の法則 力(F)=質量(m)・加速度($\alpha$) に対してガリレイ変換が成立するかを調べてみよう。 力の方程式は F =m・$\alpha$、 \[\alpha=\frac{d^2 x}{dt^2}\] である。 S1系での速度はx‘をt‘で微分して得られるから \[\frac{dx'}{dt'}=\frac{d(x-vt)}{dt}=\frac{dx}{dt}-v\] となる。更にt‘で微分し、t=t’であるから \[\frac{d^2x'}{dt'^2}=\frac{d}{dt'}(\frac{dx'}{dt'})=\frac{d}{dt}(\frac{dx}{dt}-v)=\frac{d^2x}{dt^2}\] となり、どちらの慣性系でも加速度の式が成立することが分かる。 以上のことから、ニュートンの運動の方程式は慣性系によらず成立する。このことを「ニュートンの運動方程式はガリレイ変換に不変である」と呼ぶ。 (2)力学とは別に電磁気学での基礎法則にはマクスウエルの方程式があり、それから導きだされる“波動方程式”がある。 \[\frac{\partial^2E}{\partial t^2}=c^2\frac{\partial^2E}{\partial x^2}\] ここで、E は電場。 また光の速度が普遍定数であることから、以下の計算を多少簡略化するため1秒間に進む距離を1光秒(3・108m)とした単位系があり、これを幾何単位系と呼び、この単位系を用いることにしよう。この単位系で用いる速度vは当然1以下の値となる。幾何単位系で波動方程式をあらわすと、 \[\frac{\partial^2E}{\partial t^2}=\frac{\partial^2E}{\partial x^2}\] である。 次に、この方程式がガリレイ変換に対しどうなるかを調べてみよう。 ガリレイ変換は x‘= x−vt 、 t’=t であるから, ***** 計算式14−1:電場のガリレオ変換 **** \[\frac{\partial}{\partial x}=(\frac{\partial x'}{\partial x})(\frac{\partial}{\partial x'})=(\frac{\partial}{\partial x'})\] \[\frac{\partial}{\partial t}=(\frac{\partial x'}{\partial t})(\frac{\partial}{\partial x'})+(\frac{\partial t'}{\partial t})(\frac{\partial}{\partial t'})=-v・(\frac{\partial}{\partial x'})+(\frac{\partial}{\partial t'})\] 更に微分して、 \[\frac{\partial^2}{\partial x^2}=\frac{\partial^2}{\partial x'^2}\] \[\frac{\partial^2}{\partial t^2}=\frac{\partial^2}{\partial t'^2}-2v(\frac{\partial^2}{\partial x'・\partial t'} )+v^2(\frac{\partial ^2}{\partial x'^2})\] また、波動方程式は \[\frac{\partial^2}{\partial t^2}=\frac{\partial^2}{\partial x^2}\] であるから \[\frac{\partial^2}{\partial t'^2}=\frac{\partial^2}{\partial x'^2}+2v(\frac{\partial^2}{\partial x'・\partial t'} )-v^2(\frac{\partial ^2}{\partial x'^2})\] K1の項 K2の項 以上の結果から、波動方程式をガリレイ変換したときはk1項とk2項の2つの余分な項が現れる。このことは静止した慣性系と運動している慣性系とは、物理法則が異なってしまうということになる。例えば地球は公転も自転もしており場所や時期により速度が変化しているのであるから、波動方程式が随時変化することになる。このことは明らかに我々の日常の経験とは異なる。即ち、波動方程式はガリレイ変換に不変ではない。
一方マックスウエルは電磁現象を物理的に説明するにはその媒質となるエーテルが絶対に必要で、この静止エーテルの中を地球が高速で公転している際、エーテルの風が吹くはずであると考え、それを確認する実験が必要であることを提唱する。この実験はマイケルソンとモーレーによって1887年に行われた。 実験内容の詳細は、前章を参照。 その当時の科学的常識からして、誰もがエーテルの風を観測できるだろうと予想していた。しかしその結果は驚くべきことに、エーテルの風は全く測定されないというものであった。上記の説得力のある予測と実際の実験結果との矛盾は一体何なのか、その結果に対しマイケルソンは、たぶんエーテルは地球と共に運動しているためだろうと言う。
ここで \[\frac{1}{\gamma}=\sqrt{1-\frac{v^2}{c^2} }\] 逆に運動している慣性系の尺度を1とおくと、絶対静止の慣性系はγ倍長くなる。そうすると確かに 進行方向の光が要する時間(TA)と、横方向の光が要する時間(TB)とは同じとなって、実験結果をうまく説明できる。しかしこの案は出てきた結果に対し後から辻褄あわせをしたに過ぎないなどの批判も多く出た。 この進行方向に対し、1/$\gamma$ 短縮する変換を本書ではフィッツジェラルド変換と呼ぶことにしよう。以下にその変換式を書く。 x‘ = $\gamma$(x−vt) t‘ = t このフィッツジェラルド変換に対する評判はあまり良くなかったが、先ほどの電磁気学の波動方程式に対する変換を行ってみよう。ただし幾何単位系 c=1 をもちいて、 \[\gamma =\frac{1}{\sqrt{1-v^2}}\] とする。 *** 計算式14−2:フィッツジェラルド変換 **** \[\frac{\partial}{\partial x}=(\frac{\partial x'}{\partial x})(\frac{\partial}{\partial x'})=\gamma・(\frac{\partial}{\partial x'})\] \[\frac{\partial}{\partial t}=(\frac{\partial x'}{\partial t})(\frac{\partial}{\partial x'})+(\frac{\partial t'}{\partial t})(\frac{\partial}{\partial t'})=-v・\gamma・(\frac{\partial}{\partial x'})+(\frac{\partial}{\partial t'})\] 更に微分して、 \[\frac{\partial^2}{\partial x^2}=\gamma^2・\frac{\partial^2}{\partial x'^2}\] \[\frac{\partial^2}{\partial t^2}=\frac{\partial^2}{\partial t'^2}-2v・\gamma・(\frac{\partial^2}{\partial x'・\partial t'} )+v^2・\gamma^2・(\frac{\partial ^2}{\partial x'^2})\] また \[\frac{\partial^2}{\partial t^2}=\frac{\partial^2}{\partial x^2}=\gamma^2・\frac{\partial^2}{\partial x'^2}\] であるから、 \[\gamma^2・(\frac{\partial^2}{\partial x'^2})=\frac{\partial^2}{\partial t'^2}-2v・\gamma・(\frac{\partial^2}{\partial x'・\partial t'} )+v^2・\gamma^2・(\frac{\partial ^2}{\partial x'^2})\] \[\frac{\partial^2}{\partial t'^2}=\gamma^2(1-v^2)\frac{\partial^2}{\partial x^2}-2\gamma v・(\frac{\partial ^2}{\partial x'\partial t'})=\frac{\partial^2}{\partial x'^2}-2\gamma v・(\frac{\partial ^2}{\partial x'\partial t'})\] K’2の項 以上の計算結果から、ガリレイ変換では二つの余分な項k1とk2があったが、フィッツジェラルド変換ではk1の項がなくなっていることが分かる。このことがどのような意味を含んでいるかを考えると、長さの軸が短縮され時間の軸は変わらないのであるから、光速を短くなった物差しで計ると当然光速以上の数値となる。 そこでローレンツは次のような仮説を提案する。ローレンツは絶対静止のエーテルの存在から抜け出すことは出来なかったため、それを前提条件として論考を進める。そして彼はガリレイ変換の時間座標にも変更を加えるという奇妙なことを考え、そのような慣性系特有の時間を“局所時間”と名付ける。しかしこの局所時間が物理的にどのような意味を持つかに関しては一切説明を避けた。そしてこの変換を本書ではローレンツ変換と呼ぶことにしよう。以下にそれを記す。 x‘ = $\gamma$(x−vt) t‘ = $\gamma$(t−vx) この変換から進行方向の物差しと、時間とを同一比率だけ短縮したのであるから、慣性系によらず光速度が不変になることが分かる。そこでフィッツジェラルド変換と同様、ローレンツ変換に対しても波動方程式に対する変換を行ってみよう。 *** 計算式14−3: ローレンツ短縮 *** \[\frac{\partial}{\partial x}=(\frac{\partial x'}{\partial x})(\frac{\partial}{\partial x'})+(\frac{\partial t'}{\partial x})(\frac{\partial}{\partial t'})=\gamma・(\frac{\partial}{\partial x'})-\gamma ・ v(\frac{\partial}{\partial t'})\] \[\frac{\partial}{\partial t}=(\frac{\partial x'}{\partial t})(\frac{\partial}{\partial x'})+(\frac{\partial t'}{\partial t})(\frac{\partial}{\partial t'})=-v・\gamma・(\frac{\partial}{\partial x'})+\gamma (\frac{\partial}{\partial t'})\] 更に微分して、 \[\frac{\partial^2}{\partial x^2}=\gamma^2・\frac{\partial^2}{\partial x'^2}-2v・\gamma^2・(\frac{\partial^2}{\partial x'・\partial t'} )+v^2・\gamma^2・(\frac{\partial ^2}{\partial t'^2})\] \[\frac{\partial^2}{\partial t^2}=\gamma^2・\frac{\partial^2}{\partial t'^2}-2v・\gamma^2・(\frac{\partial^2}{\partial x'・\partial t'} )+v^2・\gamma^2・(\frac{\partial ^2}{\partial x'^2})\] また \[\frac{\partial^2}{\partial t^2}=\frac{\partial^2}{\partial x^2}=\gamma^2・\frac{\partial^2}{\partial x'^2}\] であるから、 \[\gamma^2・(1-v^2)\frac{\partial^2}{\partial t'^2}=\gamma^2・(1-v^2)\frac{\partial^2}{\partial x'^2}\] よって、 \[\frac{\partial^2}{\partial t'^2}=\frac{\partial^2}{\partial x'^2}\] 以上の計算結果から、余分な項kが完全になくなっていることが分かる。このことは波動方程式がローレンツ変換に対し不変である。即ち、異なった慣性系に於いて、どちらの慣性系でも波動方程式は成立する。これで電磁気学における波動方程式が、ガリレイ変換とフィッツジェラルド変換に対しては不変でないが、ローレンツ変換には不変であることが証明できた。 さて次に気になる疑問は、ガリレイ変換に対し不変であった、ニュートン力学の方程式がローレンツ変換に対しても不変かどうかである。以下にその計算をしてみよう。 *** 計算式14−4: 力学のローレンツ変換 *** ローレンツ変換は x’=$\gamma$(x−vt)。 t’=$\gamma$(t−vx) である。 S1系での速度は dx’/dt’ であるから、それを計算すると \[\frac{dx'}{dt'}=\frac{\gamma(dx-vdt)}{\gamma(dt-vdx)}=(\frac{dx}{dt}-v)\div (1-v・\frac{dx}{dt})\] 以上の結果から、速度に対してローレンツ変換は、不変ではない。これを更に時間で微分した加速度が不変でないことは明らかである。したがってローレンツ変換では、波動方程式に対しては、不変であるが、速度や加速度に対しては不変でない、即ち、ニュートン力学はローレンツ変換に対し不変でないことが分かった。即ち、運動する慣性系ではニュートンの法則が成立しないことになる。これは明らかに我々の経験とは異なる。
(1)一の原理は、物理法則はいかなる慣性系に於いても同じ形をとる。 (2)二の原理は、光源の運動によらず光速は不変である。 一の原理は、極めて分かりやすい。異なった慣性系によりそれぞれ物理法則が異なっていたら現存する秩序ある空間などありえないだろう。 二の原理に関しアインシュタインは、一度光源から放たれた光は、光源の速度には無関係にエーテル中を光速で進むというのである。これは一見エーテルの存在を肯定しているようであるが、彼はこの原理(光速度不変)を与えればエーテルなどの仮説は全く不要であると言う。(ただし、エーテルの存在を否定したわけではない。しかしその後、エーテルの存在は否定されることになる) そして絶対静止エーテルを基軸とした座標変換を放棄し、光速度不変を基軸とした座標変換を提案する。 図14−2: 光速度を基軸とした座標変換 アインシュタインの考えは、慣性系S0と慣性系S1とは絶対静止エーテルを介して行われるのではなく、光速度不変の原理に従って行うべきであるというものである。例えば、S0が速度V=10、S1がV=20で同一方向に等速運動している場合、その速度差はV= 10であるからその速度差の分、光の世界線(どの慣性系から見ても共通の光の道筋)を介して互いに相手の進行方向の軸と時間軸が同比率(1/γ倍)だけ短縮される。そのことを図14−2 により説明しよう。 A図において、互いの慣性系が同一速度の場合は、x軸とt軸(時間)は直角をなし、またx‘とxおよびt’とtとは同一である。この時の光の世界線(どちらの慣性系から観察しても同じに見える光が通過する線)はx軸とt軸を半分割する45度をなす。また、Oから発した光は光速cでWに達する。 そして慣性系同士の速度差がvになると(図では光の方向と速度vの方向が同一としている)慣性系S1では原点O’が光方向にvだけ移動し、その移動分光速が遅くなりO’Wとなり、S1系のX方向の軸も短縮されO’Dとなり、X’軸はODを結んだ線上となる。一方光速度不変の原理から、X方向が短縮された分時間も短縮されなければならない。そのt’軸はOとCとを結んだ線上になる。このように慣性系S0からみたS1系の長さと時間は短縮される。そしてその座標軸は直交せず図のような斜交座標系になる。 実はここまでの相対論はローレンツ変換と同じことを言っているにすぎない。世界線だとか斜交座標だとか新しい言葉にまどわされないことである。したがって波動方程式は、慣性系の相違によらず不変である。 他の座標変換と特殊相対性理論の根本的な相異は、絶対時間、絶対空間、静止エーテルを考慮しない点にある。そのため自己の慣性系を基軸として、他の慣性系を計量することになる。故にS1系からみた時は、S1系が静止と見做し、S0系が速度vで移動していることになり、同じように短縮され斜交座標系になるのである。即ちどちらの慣性系から見ても、相手の慣性系の長さと時間が同一比率(1/γ倍)で短縮されるのである。基軸となる静止エーテルがないため、どの慣性系に於いても自己の慣性系の時間と長さと物理法則は不変である。したがってローレンツ変換では不変にならなかったニュートン力学の加速度の法則も、相対性理論ではどちらの慣性系でも成立することになる。 以上のような発想から構築された理論を特殊相対性理論と呼ぶ。相対性理論により、ローレンツ変換では不変でなかった力の法則も不変となり、これまで説明出来なかったマイケルソン、モーレの実験結果を全く矛盾なく見事に説明することが出来た。
しかし1964年に、宇宙背景放射が発見される。この放射はあらゆる方向から等しい温度で放射されており、宇宙全体の温度と解釈されている。この背景放射が宇宙の絶対静止を示しているのではないかという考えも浮上してきている。更に詳細な観測から、ある方向に対し光のスペクトルが赤方偏移を示し、その逆方向のスペクトルは青方偏移を示すことが測定された。そのことから、地球(又は太陽)は絶対静止系に対し、およそ秒速600Kmで移動してるのではないかという説もある。 熱や温度の観点からは、以前は熱とか温度とは熱素という粒子であると考えられていたが、色々な実験事実から運動であることが明らかになってきた。また理想気体の分子運動から絶対零度の存在も予測されており、高温から低温(絶対零度)になるに従い分子の運動も遅くなり絶対静止に近ずくに違いないという考えは、極めて理にかなっている。 本書ではエーテル大気の存在の確認から始まり、累積エネルギーという新概念を説明し、これ以上分割不能なプランク定数から量子単位系を定義し、更に重力定数の次元解析法を応用しそこから未知なる粒子を発見した。そしてこの未知なる粒子が光速に達した時その未知なる粒子の持つ累積エネルギーが、量子単位のエネルギーと完全に一致することを証明し、その瞬間未知なる粒子の持つ累積エネルギーは相転移を生じ粒子内部から宇宙空間に量子揺らぎとして放出されるのであると解いてきた。この量子揺らぎを放出した時、未知なる粒子は累積エネルギーが0(ゼロ)となりそのような粒子の状態が絶対静止なのであると説明している。 この絶対静止の存在という成果が、堅固に理論武装された相対性理論の一角に風穴を開けたことは確かである。
私が相対性理論は正しいと信奉していた根拠は沢山あるが、その理論体系の美しさに加え、光速に近い宇宙線が上空で空気の原子核と衝突した際のミュー中間子の寿命の延び、重力による光の赤方偏移など、多くの予言が現実に検証されており、それらを覆すことなど殆んど無理だろうと感じていたからである。しかし本論考に於いて宇宙には絶対静止が存在すること、及び粒子が光速に達すると光を放射することを明らかにした。このことは相対性理論が間違っていることを確実に示している。そこで本章では、ローレンツ変換や相対性理論などの手の込んだ座標変換を用いなくともマイケルソン・モーレーの実験を容易に正しく説明できる理論に関し解説しよう。 そもそもローレンツ変換や相対性理論が考案され始めたきっかけは、マックスウエルが彼の電磁理論を実証するには絶対静止のエーテルを検証する必要があると述べたことからである。そしてそれを立証するためのマイケルソンとモーレーの実験が行われ、その結果静止エーテルの存在が怪しくなってきた。そこから眼前の現象を正当化するため様々な座標変換が論じられるようになってきたのである。 しかし冷静に科学思想史を振り返ってみると、第4章で記したようにあらゆる偉人たちにより200年以上にも亘り論戦が繰広げられたエーテル仮説は、徐々にではあるが正しい方向に進んでいたとしか思えないのである。一つの実験事実を正当化するため、一時的な思い付きにより長期に亘り蓄積されたエーテル仮説をいとも簡単に排除してしまってもよいのだろうか。また時間と空間という基本概念まで変えてしまったのである。その真偽は別として科学史的観点から見るとあまりにも早計ではないだろうか。これは明らかに苦し紛れの末一時的に提唱された理論であって、真実ではない。ローレンツ変換や相対性理論を用いなくともマイケルソン、モーレの実験結果を正しく説明できる理論は無いのだろうか。そこで我々は、様々な座標変換が論じられる以前の時代にタイムスリップしてこの問題を論考していくことにする。この時代においては絶対時間、絶対空間、静止エーテルの存在が公認されていたので、それが正しいという前提条件で説明していこう。 ガリレオは、運動する物体には「慣性の法則」が在ることに気ずき、アリストテレスの地球不動説を覆している。我々は幸いなことに、本書において顕在空間、潜在空間および速度座標、累積エネルギーという新概念を手にいれている。これらを駆使して上記の問題を解決し相対性理論を覆すことになる。その為に以下のような作業仮説を提唱しよう。 A、音の伝播に関しては、(ただし、空気大気が大地に対して絶対静止であるとする) (1)音波は空気大気中を音速で伝播する。 (2)物質体が静止のときは、空気との抵抗が無いので風が吹かない。 (3)物質体が移動している時は、空気との抵抗が生じ風が吹く。 (4)観測者aと音源bとが、同一速度(または静止)の時、空気との速度差は同一なのでドップラー効果は生じない。 (5)aとbとが、異なった速度の時は、空気との速度差は異なるのでドップラー効果が生じる。 B、 光の伝播に関しては(ただし、エーテル大気は静止エーテルと同様、静止であるとする) (1)光波はエーテル大気中を光速で伝播する。 (2)物質体が静止または等速直線運動の時は、エーテル大気との抵抗は生じない。 (3)物質体が加速度運動している時は、エーテル大気との抵抗が生ずる。 (4)観測者aと光源bとが、同一等速直線運動又は異なった等速直線運動の時は、エーテル大気との抵抗は生じないので、赤方偏移又は青方偏移などは生じない。このことはマイケルソン、モーリの実験結果より立証されている。即ち地球の進行方向の光と、横方向の光との波長のずれが生じなかったことから明らかである。 (5)aまたはbが加速度運動している時は、同一加速度運動で無い限り、エーテル大気との抵抗力は異なるので、赤方偏移または青方偏移が生じる。 以上の作業仮説及び本書で提唱した累積エネルギー、速度座標という新概念などから、通常の科学的常識を有する者なら、これまでの知識からでは絶対に得られなかった下記のような複数の宇宙真理が見えてくる。その詳細を図14−3 を見ながらまとめてみよう。 図14−3:粒子の移動と波の伝播 図A は、顕在空間中をO(音源)を原点として音波が空気中を伝播する。そして観測者(S)は速度Vで移動する。座標軸は位置座標で表わされる。 図B は、潜在空間中を光波が伝播する。この際座標軸は速度座標であるため、顕在空間では光は光速で移動するが、潜在空間では「光の速度線」で静止している。そして、観測者(S)が顕在空間で等速運動している際は、Sは潜在空間では静止している。Sが顕在空間で等速加速度で移動しているときは、潜在空間では等速運動となる。等加速度運動が続くとSは光速を超えてしまう。 C、 物質体(可量粒子)の運動に関しては、 (1)顕在空間での等速運動または静止は、潜在空間での静止を表現する。 (2)顕在空間での等加速度運動は、潜在空間では等速運動である。 (3)顕在空間での等加速度運動が続くと潜在空間での絶対速度が光速を超えてしまう。(これは明らかに我々の経験、即ち光速を超えることは不能であるという事実に反する) (4)潜在空間での絶対速度の値が、累積エネルギーに比例する。即ち潜在空間はエネルギー空間になっており、エネルギーに変化が無いときは潜在空間では静止である。 (5)潜在空間での累積エネルギーがある特定値(光速)に達すると相転移(氷が水になったり、水が水蒸気になったりする現象に類似)を生じ、潜在空間から顕在空間にその累積エネルギーを量子揺らぎという形で放出し、自らは累積エネルギーがゼロとなる。即ち宇宙には絶対速度における超光速が存在しないことを説明できる。 (6)累積エネルギーがゼロとなると、その粒子の速度は顕在空間に於いて絶対静止となり、潜在空間では絶対速度がゼロ、即ち座標系の原点にくる。 D、音や光(不可量粒子)の伝播に関しては、 (1)顕在空間では、音は空気中を音速で伝播しその速度は一定である。(ただし空気媒質が完全に均質であるとする。) (2)顕在空間では、光はエーテル大気中を光速で伝播しその速度は一定である。 (3)潜在空間では、音の伝播は存在しない。 (4)潜在空間では、光の伝播は絶対速度=0 のO点を中心に、速さが光速の半径をした円周の線上にのみ存在する。従って、顕在空間では光は光速で移動するが、潜在空間では永久に静止したままである。(ただし顕在空間に光に対する障害物などが無い場合である。) (5)顕在空間では、観察者が静止で音源が等速運動をしている時、その波長は変化する。物体が近付くとき波長は短くなり、遠去かるとき波長は長くなる。この現象をドップラー効果と呼んでいる。 (6)顕在空間で観測者が静止し、光源が等速運動しているとき、潜在空間では観測者も光源も静止しているので、光の波長の変化は生じない。即ち赤方偏移や青方偏移は生じない。このことからマイケルソン・モーレーの実験結果の物理的な理由を説明でき、ローレンツ短縮や相対性原理などの座標変換などは必要としないことが分かる。 (7)顕在空間で観測者が静止し、光源が等加速運動しているとき、潜在空間では観測者は静止しており、光源は等速運動をしているので光の波長は変化する。光源が観測者に近付くときは青方偏移となり、遠去かるときは赤方偏移となる。 (8)光の伝播に対しては、顕在空間で物体が等速運動のとき潜在空間では静止(エネルギーの増減が無い)であるから、その物体の座標変化(速度)はゼロとして計量しなければならない。 <注> マイケルソン・モーレーの実験においては地球の速度が秒速30kmの等速運動と見做して計算しているが、顕在空間での等速運動は潜在空間では座標変化(速度)=0であるから、地球の速度は進行方向も横方向もゼロとして計量しなければならない。即ち顕在空間で、地球の速度が秒速10kmであれ1000kmであれ、等速運動である限り、潜在空間では静止であるから、進行方向も横方向も光の波長には変化は生じないのである。 (9)光の伝播に対しては、顕在空間で物体が等加速度運動=αのとき、潜在空間ではαの等速運動であるから、速度=αとして計量しなければならない。故に潜在空間での光と物体との速度差に変化が生じ、光の波長にも変化が生ずる。 <注>この理由により、重力場(等加速度場)における赤方偏移を説明できる。 さて、以上得られた複数の知識からローレンツ変換などのような手の込んだ座標変換や、静止エーテル、絶対時間などを排除し時間や空間を操作する特殊相対性理論などを用いなくとも、マイケルソン・モーレーの実験結果を容易に正しく説明できることが分かった。即ち、実験結果を正しく説明するには、速度座標及び累積エネルギーという新概念が必要不可欠だったのである。 <結論> 以上のことから次のようなことも考えられる。 古代の科学は恒星や惑星の運行を説明するため、地球を中心とした天動説を採用しその結果、複数の天球面、周天円、離心円なるものを考案することで、計算上はうまく正当化することに成功した。しかし実際にこのような球面や円周等が宇宙空間に存在してないことが現代では確認されている。それと同様、現代科学ではマイケルソン、モーリの実験結果を説明するため、光速度不変の原理を中心とし、空間や時間を短縮したり斜傾座標系なるものを考案することで、計算上はうまく正当化することに成功している。しかし実際に空間や時間が短縮されている場所があったり、斜傾した空間があったりするとは考えにくい。 即ち、天動説が地球中心説であったように、相対性理論は個別慣性系中心説なのである。故に、現代科学の一部は、天動説を正当化する際の理論展開の時と酷似しており、大きな欠陥があるのではないかという疑惑が生ずる。 以上の複数の理由から、あらゆる偉人により200年以上に亘り論争が繰り替えされ、多数の理論が展開されてきた光エーテル、静止エーテルなどのエーテル仮説は決して誤りではなかったのではないか。しかるに我々は先人の残してくれた偉大な資産、即ちエーテル仮説を否定排除するのではなく、これまでの慣性の法則を別の角度から観察して得た累積エネルギーや速度座標系なる新概念を基軸とした新しいエーテル大気理論として、今後もその特性や数値をより明晰化するため、観察と探究を続けなければならない。それが方向を見失った物理学を正しい方向へと導くことになるだろう。
14、4、1 地球の運動 地球が運動し自転もしていることは2000年以上前から知られていた。しかし、それが公認されるまでには長い歳月を必要とした。現在では地球が太陽の周りを秒速30kmで回転していることが観測されている。また太陽も我が銀河系の中心を原点として、秒速220kmで回転しているという説もある。更に地球自身が自転しており、赤道近辺では秒速0.46kmで回転している。 以上のような観測事実から地球上に住む我々は、じっと静止し座っているだけでも宇宙空間の中をかなり複雑に運動しており、それも秒速数百Kmというもの凄い速さで移動しているのである。 14、4、2 超光速は存在するか (1)物質に対して 本書では再三述べてきたように、我々の宇宙では、粒子であれ波であれ潜在空間での絶対速度が光速を超えることが出来ないことを説明してきた。例えばAの星が光速に近い速度で移動し、Bの星は反対方向に光速に近い速度で移動してれば、Aから見てBは明らかに光速を超えて運動していることになる。従って相対速度を考慮した場合では超光速が存在することが容易に理解できる。故に本書でも超光速粒子の存在は認めている。しかし重要なのはいかなる物体(星)も絶対速度の光速を越えることは出来ない。 (2)光の伝播に関してはどうなるだろうか。 光の伝播に関しても上記の星の場合と同様に考えると、地球がある速度で移動しているとするとき、同地点から同時に発した光の速度が、進行方向の光の速さと、反対方向に放出した光の速さとで異なってしまい、光速が方向によりまちまちな値となってしまう。これは致命的な欠陥である。何故なら我々は様々な観測事実から、地球の運動によらず光がいかなる方向にも光速は一定であることを知っているからである。絶対空間、絶対静止を認める限りこの問題の解決は不可能のように感じられる。従ってローレンツは時間と空間を短縮することで、またアインシュタインは特殊相対性理論において絶対空間、静止エーテルを放棄することでこの問題を解決しようとした。そのことは前記したとおりである。アインシュタインが相対性理論を発表した当時は、相当数の反論や批判を受けたようである。しかし誰もそれに代わる理論を構築できる者は現れなかった。故に相対性理論が殆んどの現象を矛盾無く説明でき、又それを覆すような理論を提唱できる者は誰も現れなかったため現在では相対性理論が支配的理論として公認されている。 本書では絶対空間、絶対時間、絶対静止を肯定しているのであるから、現存の知識だけではこの問題の解決は困難である。そこで潜在空間、速度座標系などの新概念を理解するのに適した問題を一つ提供したい。 問題: 絶対時間、絶対空間、静止エーテルを肯定した際、絶対速度V(V≠0)で等速直線運動している惑星の一点より発した光はエーテル中をどの方向にも光速で伝播するのであるから、惑星の進行方向と逆方向では光の速度に相違が生ずるはずである。しかしマイケルソンの実験事実からは惑星の運動によらずどの方向に対しても光は同一速さ(光速)である。絶対時間、静止エーテルを肯定したまま以上の矛盾を解消するための論理を構築せよ。 *ローレンツ変換ではニュートン力学が慣性系の相違により不変でなくなり使用できない、また相対性理論では静止エーテルなどを否定しているので使用できない。したがって全く新しい別の方法を考える必要がある。 <回答> 本書では新しい知識として速度座標と累積エネルギーという新概念を説明してきた。ここでもそれを利用しよう。 まず始めに次のことを認識しておく必要がある。前記の星と星との相対速度は、物質と物質との相対速度である。これから論述する内容は物質(地球)と光波との相対速度である。なにが異なるかというと、物質は空間に何も無くても運動することが出来るが、音とか光のような波はそれを伝える媒体が無ければ伝播出来ない。音波の場合は空気を、光波の場合はエーテル大気を媒体としている。 (1)音の場合 地球は宇宙空間を移動しているが、空気大気は大地に対し静止しているとする。このとき音源が空気大気中で静止していればその音源から発した音は、全方向に対し同じ速度(音速)である。ここで特に強調しておかなければならないことは、顕在空間で空気大気も音源も静止している場合は、音源に対し音速は全方向に同一であるということである。 しかし音源が速度vで移動していた時は、移動方向に対し音の速さは、 {音速(空気中を伝わる速さ)− v} となり相対速度が適用できる。 (2)光の場合 次に光の場合はどうだろうか。光はエーテル大気を媒体として伝播するのであるから、このときは潜在空間を中心に考慮しなければならない。この際、顕在空間において速さvで等速直線運動している星は、潜在空間では絶対速度vの位置に静止している。異なった速度で等速運動している二つの星は、潜在空間では両方とも静止している。したがって光源も観測者も静止しているので、赤方偏移などの波長の変化は生じない。また光はエーテル大気中を伝播するのであるから、光源の速度とは無関係に光の速度線上にある。このことは我々が通常経験している「光速度不変の原理」と合致している。即ち絶対時間、絶対空間、絶対静止エーテルを否定、排除しなくともマイケルソン、モーレーの実験を正しく説明することが出来るのである。 次に顕在空間で光源(星)が加速度aで等加速度運動している場合はどうだろうか。この場合、潜在空間では光源は速さaの等速運動であるから、移動方向に対し光の速さは、 {光速(エーテル大気中を伝わる速さ)− a} となり相対速度が適用され、赤方偏移などの光のドップラー効果が生ずる。
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