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エネルギー量子仮説 
順列、組み合わせ 
スターリングの公式 
ラグランジェの最小自乗法
マクスウェルの分布則   

6、6 プランクの輻射公式  

 自然定数および分割/不分割の問題では、プランク定数を省くことは出来ない。  プランク定数とは、空洞輻射の問題からドイツのプランク(1858〜1947)が提唱したもので、これまで連続的すなわち無限分割可能と認識されていた電磁波エネルギー(熱輻射)は、連続的ではなく、h$\nu$、2h$\nu$、・・・、のように離散的なエネルギー量子だけが、許されなければならないことを明らかにした。($\nu$:振動数) この発見が、統計力学から量子論への発展につながる。
 本論考でもプランク定数が導出されるまでの時代的背景と科学的思考の変遷はとても重要だと考えているので、要点を絞って説明しておこう。 
6、6、1 エネルギー量子 
 この空洞輻射のスペクトル分布の問題に関しては、その当時数多くの研究者が取り組んでおり、その中の一人にプランクがいた。この問題に対し優れた研究者のほとんどが、輻射の強さが温度に依存することの証明に向かっていた。しかしプランクは、その方法では本質的な環が欠けており解決は困難であることを悟り、彼の得意分野である熱力学におけるエントロピーがエネルギーに左右されるのではないかと考えた。そして、この方面からこの問題の着手を始め具体的な式を導くことになる。まず、ヴィーンの公式が正しいという仮定のもとで、次のような式を展開していく。(この当時ヴィーンの公式はあまり評判の良い学説ではなかった。しかし、プランクはこの公式には真理の一面も含んでいることを察知し論考を進めていく)
 空洞内が熱平衡状態にある振動数$\nu$と$\nu$+d$\nu$のあいだにあるエネルギー密度はu($\nu$,T)d$\nu$で、振動子の数はn($\nu$)d$\nu$である。従って一つの振動子のエネルギーは、 
 U=(u($\nu$,T))/(n($\nu$))    で与えられる。
(1)エネルギー等分配則が成立するときレイリー・ジーンズの公式から
\[u(\nu,T)=\frac{8\pi\nu^2kbT}{c^3} 。   n(\nu)=\frac{8\pi\nu^2}{c^3}  \]    従って、U=kbT 
 次に、熱力学の関係式  TdS=dU+pdV  (Sはエントロピー) を用い、かつ定積変化を行った場合は、dV=0であるから
\[\left(\frac{\partial S}{\partial U}\right)_V=\frac{1}{T}=\frac{kb}{U}\]    となり、その二次微分係数は 
\[\frac{\partial ^2S}{\partial U^2}=-\frac{kb}{U^2}\]   を得る。 
(2)ヴィーンの輻射公式の場合は次の式で与えられた。  
\[U(\nu,T)=a・exp(\frac{-R}{T})   ・・・  ここで R=\frac{k_2\nu}{kb}\]    上式より  \[\frac{U}{a}=exp(\frac{-R}{T}) 。  \frac{-R}{T}=log(\frac{U}{a})\]  これより 、
\[\left(\frac{\partial S}{\partial U}\right)_V=\frac{1}{T}=\frac{-1}{R}log(\frac{U}{a})\]  となる。
そこで、その二次微分係数は、 \[\frac{\partial ^2S}{\partial U^2}=\frac{-1}{R}・\frac{1}{U}=-\frac{kb}{k2\nu}・\frac{1}{U}=-\frac{kb}{h\nu}・\frac{1}{U}\]  を得る。 ここで k2=h と置いた。
 プランクはこの二つの関係式が、非常に簡単であるのに驚いた。そしてそこにこそ普遍的な原理が存在しているのではないかと考えた。プランクいわく「当時私は、今もってそうであるが、自然法則というものは一般的であればあるほど簡単に表現されると考えていた」。即ち、等分配の法則(レイリーの公式)に従うとき、エントロピーの二次微分はエネルギーUに反比例し、ヴィーンの公式に従うとき、Uに反比例するのである。また前者のときは振動数の少ない領域で良く合い、後者のときは振動数の多い領域で良く合うのである。このことから彼は、振動数の少ない限界に於いてはレイリーの式が成立し、多い限界に於いてはヴィーンの式が成立する最も簡単に得られる式を導きだした。
 この二つの式を一般化するには、ヴィーンの公式から得られるエネルギーの1乗の項と当分配則より得られるエネルギーの2乗の項との和に等しいという内挿法なる数学的技法を採用した。
  つぎに、(1)と(2)の2次微分の項の両者を加算して、    \[\frac{\partial ^2S}{\partial U^2}=-\frac{kb}{U^2}-\frac{kb}{h\nu}・\frac{1}{U}=-\frac{kb}{h\nu}(\frac{h\nu}{U^2}+\frac{1}{U})\]  更に実験値とよく合う式を模索し、以下のような式を考えたようである。
\[\frac{\partial ^2S}{\partial U^2}=-\frac{kb}{h\nu}(\frac{1}{U}-\frac{1}{U+h\nu})\]   この式を積分して,
  \[\frac{\partial S}{\partial U}=\frac{kb}{h\nu}log\frac{U+h\nu}{U}=\frac{1}{T}\]  書き換えて
  \[log\left(1+\frac{h\nu}{U}\right)=\frac{h\nu}{kbT}\]  よって、
\[U=\frac{h\nu}{exp\frac{h\nu}{kbT}-1}\]   これに振動子の数 n($\nu$)を掛けて 
\[u(\nu,T)d\nu=\frac{8\pi h\nu^3}{c^3}\frac{1}{exp\frac{h\nu}{kbT}-1}d\nu\]   を得る。 この式が、プランクの輻射公式である。その後の観測事実からもこの輻射式が非常に正確であることが実証され、ようやく輻射スペクトル分布の正しい法則が見出されたのである。 
 ここで x=h$\nu$/kbT  と置くと 
\[u(\nu,T)d\nu=\frac{8\pi kbT}{c^3}\frac{x}{e^x-1}・\nu^2d\nu\]  となり、xが 0に近い領域で、即ち kbT は振動子の平均エネルギーを現しているから、h$\nu$がkbTより小さい領域では
  x/(eー1)  が1に近ずき、等分配の法則が成り立つ。
また、xが ∞ に近い領域では、 x/(eー1)  は x/e  に近ずき、ヴィーンの公式が成立する。 
 式の中の定数hは、実験的に決める事が出来、作用量子あるいはプランク定数と呼ばれる。
6、6、2 エネルギー量子仮説 
 空洞輻射の問題を解決するため、複数の研究者の努力によりようやく導かれたプランクの公式ではあったが、プランクは言う。「この公式は幸運な直感によって発見された法則であり、形式的な意義でしかない。そこで私はこの法則を見出したその日から、この式に含まれる物理的な意味を与える仕事に熱中した」と。 そして彼は、つぎのような仮説をたてる。 
 ボルツマンの原理 : S=kb・logW   W;微視的状態の数
 彼はエントロピーに関するボルツマンの原理に着目し、空洞内の輻射エネルギーは電磁理論によると、無限に小さく分割できるので、その式の微視的状態の数Wも無限大になってしまい、限定された空洞内でもエントロピーSが無限大となり経験と異なる。故に彼は、分子運動論では原子というこれ以上分割できない原子があるように、輻射エネルギーも無限分割出来ない最小単位が存在すると仮定した。
その値は、 ε=h$\nu$  として提出され、ここに現れた定数hを、プランクはエネルギー量子または作用量子と名付けた。
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注:このボルツマン定数kb に関してプランクは次のように述べている。
「私の知る限り、ボルツマン自身がこれを導入したことは決してない。ボルツマンは一度もこの定数の数値を研究しようとしなかったのである」
** 
 そして、作用量子hに関しては、2つの解釈を述べている。
(1) この得られた作用量子自体が虚構のモノであり、輻射法則そのものが錯覚であり、物理的に意味を成さないものであると捉えるべきか。 
(2) この輻射法則が得られた根底には、真に物理的意味が存在し、これまで築かれてきた物理的思想の中に、今までにない新たな概念が出現したと捉えるべきか。
その後の経験は、後者を採ることになる。


6、7 数学的予備知識  

6、7、1 順列、組み合わせ 
A)場合の数 
 机の上に一つの箱と一つの玉があるとする。この時箱の中の状態は玉が無い場合と、一つだけ入っている状態の2通りが存在する。このようにある条件を定めそれに相当する状態の数を、数学的には場合の数と呼ぶ。
 次に、白と赤の玉が一つずつ在り、箱の中には玉を一つしか入れられないという条件にすると、箱の中の状態は玉がない場合、白い玉がある場合、赤い玉がある場合の3通りが存在する。更に箱の中には二つの玉を入れてもよいという条件に変えれば、場合の数は4通りとなる。
  B)順列
   場合の数を求める方法の一つに順列という考え方がある。順列とは例えばA、B、Cという3人の人を1列に並べた際、取り得る状態の数は、ABC、ACB、BAC、BCA、CAB、CBAの6通りである。このように順序を考慮した際の場合の数を求める方法を順列と呼ぶ。
例1: 今A、B、C、Dの4人の生徒がいる。このうち2人を選び出し1列に並べる場合の数は何通りあるか。
 2人を選び出す組みの数は、AB,AC,AD,BC,BD,CDの6通りである。2人の組みを並べる数は2通りである。よって 6x2=12 となり、求める場合の数は12通りである。 一般に識別可能なn個のものからr個を取り出し、それを1列に並べる場合の数は次の式で表される。
  n Pr = n! / (nーr)!  ・・・順列の式 
ここで n! はnの階乗と呼び、 n!=n・n―1・n―2・・・・3・2・1 である。
 故に (nーr)!は、(nーr)!=(n―r)・(n―r―1)・・・・・3・2・1 である。
そして r=n の時は、nーr=0となり (n―r)!=0! となる。そこで 0!=1と定めることにより、上記の順列の式は成立する。
<重複順列>
 次に重複を許す場合について考えていこう。
 今、複数の白い玉と複数の赤い玉があったとする。白か赤かの識別はできるが白どうしの玉、赤どうしの玉の識別はできない。そしてこの複数の玉の中から3個を選び1列に並べる場合の数を求めてみよう。
 2色のものから3個を選び出す場合の数は、白3、白2と赤1、白1と赤2、赤3の4通りである。そしてそれぞれに対し1列に並べる場合の数は、白3の時は1、白2の時は3通り、白1の時は3通り、赤3の時は1通りであるから、合計で8通りである。
 一般に、重複可能なn個の種類の物から、r個の物を取り出し1列に並べる場合の数Pは次式で表せる。
  P=nr  
上の例では P=2 =8  である。
例2:1から5までの整数を用いて、各整数の重複を許した際、3桁で表せる数はいくつあるか。
 n=5、r=3であるから、P=5 =125 通りである。
C)組み合わせ
 並べ方の順序を考慮せず、組み合わせの数のみを求める方法である。 例えば、1から4の整数の中から2つだけ取り出す組み合わせを求め、各組の順序は考慮しない場合をかんがえる。この時の組み合わせは、1と2、1と3、1と4、2と3、2と4、3と4の合計6通りである。  これは、4個のうちから2個を取り出す順列の場合の数 を2個の順序の数=2! で割った値になる。即ち  ()/() =(4・3)/(2・1) =6  となる。 一般に、識別可能なn個の物から、r個を選び出す組み合わせの数はnr で表され、  nr =nr / r! そして、特に nn = 1、 n = n  である。
6、7、2 スターリングの公式 
   階乗 n! の計算を行う際、nの数が大きくなるほどその計算が大変となる。そこで、近似式を用いてより簡単に計算できるよう考えられたのがスターリングの公式である。    n!≈ (n/e)n
     [ 証明] この近似式が正しいことを証明しよう。
 まず、n!の自然対数を考える。
\[log(n!) = log1+log2+log3+・・・+logn \\ =\int^{n}_{1}log(x)dx= [x・log(x)-x]^n_1 =n・log(n)-(n-1)\] nが非常に大きい場合は  n−1 ≈ n  。
よって、   \[log(n!) ≈ n・log(n)-n=log(n)^n-log e^n=log(n)^n・e^{-n}\]  以上から n! ≈ (n/e)n   が得られる。
  nが20以上になると、かなり良い近似値が得られる。
6、7、3 ラグランジェの最小自乗法  
 今、幾つかの独立変数を持つ関数f(x、y、z、・・)を考える。この関数が極値を取るための条件を求めるには、まずこの関数の全微分をもとめる。
\[df=\frac{\partial f}{\partial x}dx+\frac{\partial f}{\partial y}dy+\frac{\partial f}{\partial z}dz\]     次に、各変数に対する偏微分:(∂f/∂x)、(∂f/∂y)、(∂f/∂z) の傾きが0になる時極値を持つことがよく知られている。しかしその点が極大か極小かを判断するには更なる周辺の傾きを算出する必要がある。 
 さて、ラグランジェの未定乗数法とはこの極値問題に対し、ある特定の拘束条件を与えた際、比較的簡単に解答を求める数学的技法である。 簡単な例題を交えながら説明していこう。  長方形の面積Sが4mで、周辺の長さの合計をLとした際、次の2式が成立する。    S=x・y=4 、x・y―4=0  
   L=2・(x+y)
 この時のLの最小値を求める問題である。
 関数を f(x、y)=L=2(x+y)、
拘束条件の式は g(x、y)=S=x・y―4=0 と置きます。
次に新しい関数 F(x、y、λ)=f + λ・g = 2(x+y)+ λ(x・y―4)  に変数変換する。この時のλをラグランジェの未定乗数と呼ぶ。
極値を求めるには、
(∂F/∂x)=0、(∂F/∂y)=0、(∂F/∂λ)=0  を解けばよい。
(∂F/∂x)=2+λ・y=0、(∂F/∂y)=2+λ・x=0、(∂F/∂λ)=x・y―4=0 。 最初の2式から、極値においては x=y であることが分かる。よって3式に代入すると、 x =4、故にx=y=2、L=2・(2+2)=8m を得る。
 一般に関数f(x、y、z)の関数に対し、
    g(x、y、z)=0
    j(x、y、z)=0
の拘束条件が加わった場合、その極値を求めるには新しい変数α、βを用い別の関数を作る。
  F(x、y、z、α、β)=  f(x、y、z)+α・g(x、y、z)+β・j(x、y、z)=0
このα、βを未定乗数と呼んでいる。
 次に、∂F/∂x=0、∂F/∂y=0、∂F/∂z=0、∂F/∂α=0、∂F/∂β=0 。 を解けばよい。
[例1] 長方形において、周囲が L=2(x+y)=12m の時、面積S=x・y が最大になる時の値を求めよ。
f=x・y 
g=2(x+y)―12=0  拘束条件の式。
  F=x・y +λ{2(x+y)―12} を作る。 次に、
 (∂F/∂x)=y+2λ=0、(∂F/∂y)=x+2λ=0、(∂F/∂λ)=2(x+y)―12=0 。
 最初の2式から、x=y 。
 よって  2(2x)―12=0、これより x=y=3m 、S=3x3=9 m を得る。
6、7、4 マクスウェルの分布則 
 多数の対象物が存在する際、全ての物が同じであるとは限らない。例えば100人の学生に試験をした際、良い点数の生徒もいれば悪い点数の生徒もいる。その数の分布は点数によりマチマチではあるが、ある規則性も存在する。
 このような問題を気体分子に対し、各分子の速さのあいだにはどのような関係が在り、どのような規則性が存在するかを調べ、それを定式化したのがマクスウェルの分布則である。
問題:
 今、閉じられた箱の内部の状態を考える。箱全体の体積をVとする。内部には識別不能の同一分子が全部でN個存在し、各々が個別の異なった速さviを有している。しかし同一の速さの分子も存在し、例えばviの速さの分子の数は nj個とする。また各分子の総和の速度は0である。この時のviとnjの関係式を求めよ。
(1)微体積内部にある分子の存在確率を求める。
 全体積Vを均等に分割し、微体積Bj(x、y、z)の空間を考える。ここでx、y、zは体積Vの中心を原点0としたx、y、z軸に対し独立の数でその数は等しいと仮定する。このBjの空間を全て加算した体積が全体積Vである。そして任意のある微体積Bj内に分子が何個存在するかの配置の数wは、N個の物からn個を取り出す場合の数に相当する。即ち、N個からn1個を選び、次にN―n1個からn2個を選ぶという場合の数であり次式で表すことができる。
  w ={N!/(N―n1)!・n1!}{(N―n1)!/(N―n1―n2)!・n2!}{(N―n1―n2)!/(N―n1―n2―n3)!n3!}・・・・
    = N!/ n1!・n2!・n3!・・・・
 また箱の内部の分子の数は充分大きく、従って微体積Bj内の分子の数も大きいと考えてよく、スターリングの近似公式   Log n!=n log n―n =n(log n―1)  を用いることができる。
よって配置の数wの両辺に自然対数をとって整理すると 
  log w =log N!― 罵og nj!  
     =N(logN―1)― 馬j( log nj―1) 
     =N・logN ― 馬j・log nj   
(2)ラグランジェの未定乗数の式を作る。
 上式で任意の空間Bj内の分子の配置の数wが求まった。次に微体積Bjは全て同体積ではあるが個々の空間を識別可能な番号(x、y、z)を付けBj(x、y、z)とする。このようにすると、このx、y、z は分子の速さvj(vx、vy、vz) に該当できる。即ち、体積Bj内部に存在する粒子の速度は全て同一の速度vjを有しておりその数はnj個ということになる。従って配置の数wは全分子の数Nから速さvjの分子の数njを選び出した場合の数と全く同じである。また速さの自乗v は方向には依らず、また粒子の運動エネルギーはE=1/2・m・v であるから、計算を容易にするため各分子の持つエネルギーをεjとみなす。このときの拘束条件は  
  全分子の個数   : N=馬j 
  全分子のエネルギー: E=買テj・nj   の2つである。
上記3式の変化分が0の時、極値をとるから上式は  
  dN=播nj =0 
  dE=買テj・dnj =0 
dlog w =ー罵og nj・dnj ー播nj =罵og nj・dnj=0    
ここで、拘束条件は2つあるから、未定乗数をα、βとして新たな関数gを作る。
  g=煤i log nj + α+β・εj)dnj =0
よって、 log nj + α+β・εj = 0 。log nj = ー(α+β・εj)
    nj = eーα・eーβεj  を得る。
そして eーα = A と置くと  
nj = A・eーβεj  ・・・この式がマクスウェルの速度分布則である 。
また  eーα = f/N と置くと nj = N/f・eーβεj より  f=N/nj・eーβεj となる。
 ここでN は全分子数を表しているので、nj /N は 全分子数に対する任意のエネルギーを有する分子の数の確率を表している。
(3) Aの内容を求める 
 上記で求めたnj はエネルギーεj を持つ粒子の確率を示しており、また 
 εj=1/2・m・v 、v=vx +vy +vz 、 である。
従って、各速度に対して ー∞〜+∞ まで積分した値が全粒子数Nであるから、よって、 
\[\int\int\int^{\infty}_{-\infty}A・exp\{\frac{-1}{2}・m\beta(vx^2+vy^2+vz^2)\}dvx・dvy・dvz=N \]  ここでen =exp{n} を現す。1/2・mβ=bと置くと、また、各軸の速度に対しての確率は同一であるから上式は、
\[A\left[\int^{\infty}_{-\infty}exp\{-b(vx^2)dvx\}\right]^3=A\left[2\int^{\infty}_{0}exp\{-b(vx^2)dvx\}\right]^3=N  。\] \[(ここで数学の公式:\int^{\infty}_{0} exp\{-\beta(x^2)dx\}=\frac{\sqrt{\pi}}{2\sqrt{\beta}}   を用いて)\]  \[A(\frac{\sqrt{\pi}}{\sqrt{b}})^3=N  。\] \[これより  A=N(\sqrt{\frac{b}{\pi}} )^3  を得る。  \]

     図6、8: マクスウェル分布曲線(左図:速度分布。右図:速さ分布) 

  (4)マクスウェルの速さ分布則 
 これまでは、分子の速度の分布について求めてきた。従って各軸に対する速度はそれぞれプラスとマイナスとを有している。しかし実際の分子は、無数の分子どうしが激しく衝突し振動していると考える方が自然である。このような場合は分子の速さについて考えるとよい。
 分子の速さは方向には無関係なので必ずゼロ以上である。また速さがvとv+dvの間にある状態は何ら条件がない場合は、半径をv+dv とした球の体積から半径vの球の体積を引いた球殻の体積dVに等しい 。球殻の体積は球面積=4$\pi$r に球殻の厚さdrをかけたもので近似できるから、rをvに置き換えて dV=4$\pi$vdv 。
 そして、速度の分布則では図6、8 左 のように速度が0に近いほど存在確率は高く、速度が速いほど確率は少ない。一方速さの状態は、明らかに速さが0に近い程確率は少なく速さが速いほど確率が大きい。また、確率の積分は共に=1 であるから、その速さの分布は両者の積に相当すると考えられる。従って速さvを持つ粒子の数F(v)dvは、
  F(v)dv =A・exp(―εj・β)・4$\pi$vdv  。
  F(v) =4$\pi$A・v・exp(―εj・β) 。   
 この式が、マクスウェルの速さ分布則と呼ばれるものであるり、図6、8の右で表せる。 一般にマクスウェルの分布則と呼ぶときは、後者の速さ分布を指すことが多い。
(5)マクスウェル、ボルツマン分布
以上得られた速さ分布則F(v)を次のように書き直す。
\[ A=N(\sqrt{\frac{b}{\pi}} )^3 \]   b=1/2・mβ 。εj=1/2・mv 。   v=εjβ/b を用いて、
\[F(v)=4\pi N(\sqrt{\frac{b}{\pi}} )^3・v^2・exp(-\epsilon_j・\beta) \\ =4\pi N(\frac{b}{\pi })^{3/2}・\epsilon_j・\beta/b・exp(-\epsilon_j・\beta)=4 N(\frac{b}{\pi })^{1/2}・\epsilon_j・\beta・exp(-\epsilon_j・\beta)\]     4N(b/$\pi$)1/2 =Aと置き直して、マクスウェルの速さ分布則は次のように置き換えられる。
  F(v)=A・εj・β・exp(―εj・β) 。
 次に分子の運動エネルギーの面から考察すると、1分子の運動エネルギーEiは次式で表せる。
   Ei = 1/2・m・vi 2
そして閉じられた空洞内の全分子の持つエネルギーEは全ての分子のエネルギーを加算すれば良い。また速さv〜v+dvの間にある分子の数は、マクスウェルの速さ分布則で表せるので、全エネルギーEは次式で表せる。
\[E=\int^{\infty}_{0}\frac{1}{2}・m・v^2・A exp(-b・v^2)4\pi v^2dv=4\pi \frac{1}{2}・m・A\int^{\infty}_{0}v^4 exp(-b・v^2)dv\] \[ここで積分公式、  \int^{\infty}_{0}x^4exp(ax^2)dx=\frac{3\pi^{1/2}}{8a^{5/2}}  を用いる。\] \[E=2\pi mN(\frac{b}{\pi})^{3/2}・\frac{3\pi ^{1/2}}{8b^{5/2}}=\frac{3mN}{4b}\]    よって、b=3mN /4E 。
 また熱力学から、  PV=2/3・E、 PV=nRT  が知られている。 (ここで、P:圧力、V:体積、n:モル数、R:理想気体定数、T:温度)
 これより  E=3/2・nRT=3/2・N・Kb・T  。  Kb:ボルツマン定数。
よって、 b=3mN /4E = 3/4・mN / {3/2(N・Kb・T)}=m/2(1/KbT)
 また、b=m/2・β であるから、 β = 1/KbT  を得る。
従って F(v) = A・εj・β・exp(―εj・β) 
       = A・εj /KbT・exp(―εj/KbT) 。
これが、マクスウェル、ボルツマンの速さ分布則である。



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