我々はようやく真の量子単位と思われる三つの基本単位であるプランク単位の数値を算出できた。しかしこの数値が正しいという確証はまだない。そこで我々は更に論考を進めなければならない。
前記8、3 重力定数の次元 に於いて私は重力定数に関した独自の物理的解釈を記した。再度同じことを書こう。
重力定数 = {粒子表面の重力加速度・粒子の半径2}/粒子の質量
この解釈が正しいかどうか疑問であるが、とりあえず正しいという仮定のもと話を進めていこう。上記の式から分かることは、ある未知の粒子が存在しその粒子の半径と質量と表面加速度から重力定数が決定されるということである。
この未知の粒子の半径と質量に、上記で得られた第一及び第二のプランク定数や現代知られている様々な定数を代入し計算している際、大変興味深い数値の一致を見た。それは上式の粒子の半径には、量子単位である第1のプランク長の半分(Lp/2)、粒子の質量にはMpの値を代入して計算してみる。
粒子表面の重力加速度 =(G・Mp)/(Lp/2)2
= 2.997×108 m/s2
この得られた結果を見ると、次元は速度と加速度の相異はあるが、その数値は普遍定数である光速の値と完全に一致することが分かる。このことは一体どのような物理的意味を含んでいるのだろうか。多くの意見や批判があるだろう、例えばただ単なる偶然にすぎないとか、物理的意味など無いのではないかなど。しかし、私はこのようにして得られた複数の普遍定数の数値の整合性や、重力定数のもつ物理的解釈には論理的な一貫性があり、単なる偶然や恣意的なものではなく、宇宙真理の深層に潜む断片の顕れだと理解するのが最も妥当な考えであるという結論にたどり着いた。即ち、重力定数とは、その未知なる粒子の半径と質量と粒子表面の重力加速度より求まるものであると理解すべきではないか。また、複数の普遍定数の関連性が完全に一致することから、本論考で最終的に得られたプランク単位系が真に正しい量子単位であると、認める価値が充分あるだろう。
以下にその特徴を示す数値を記しておこう。
未知なる粒子の直径:Lp =8.101×10−35 m
未知なる粒子の質量:Mp =7.372×10−51 kg
未知なる粒子の表面上の重力: α0=2.998×108 ms−2
<追記>
* 形状:球形か、立方体か、その他かは不明。
* 体積:形状が膨張・収縮しているため平均体積しかわからない。
平均体積=(量子長)3=(8.101x10ー35)3=5.3164x10-103 m3。
以上でこれ以上分割不可能な「未知なる粒子」の特徴を明確化し、また宇宙の根底で
結ばれ、我々の宇宙を支配しているであろう真に正しい量子単位であるプランク単位系の明確な数値を導き出すことが出来た。また求め得られた量子単位の数値から、後述の重力の謎、ボーアの原子論の物理的解釈、光の放射原理、ボルツマン定数の論理的導出などを論理的、定量的に確定することが可能となる。もしこの得られた結果が正しくないなら、このような複数の数値の整合性が保たれることはあり得ないと見てよい。しかしこの結論が正しいかどうかは読者の判断に委ねたいと思う。
上記の結果が正しいと仮定するなら、未知なる粒子の大きさや質量は、現在知られている安定粒子である陽子の大きさ(半径=約10−15m)や電子の重さ(質量=約10−31kg)に較べ、更に小さい10−20 (1兆の1億分の1)という極小の粒子であることが分かる。このような粒子を現在の科学技術から検証することなど不可能であることは充分承知している。しかし近年の如く著しく進歩した科学時代に於いても、物理的に説明できない多数の謎が宇宙には存在することも確かである。例えばブラックホール、ダーク・マターなど。そのような課題と取り組み常に斬新な知識を探し求めている研究者にとって、本論考が多少なりとも役立ち、科学の進歩に貢献することを期待している。
ここでは前記の9、2 で得られた全宇宙で共通してるであろう量子単位の詳細と、それに対応した地球特有の単位系であるSIとの換算値を分かり易く表としてまとめておこう。
<注> 本書で言うプランク単位系は、現在一般に公認されているプランク単位とは多少異なるので注意してください。
表9−1:量子単位に対するSI換算値
基本量子単位 | SI換算値 |
次元 | 記号 | 呼び名 | 量子単位の数値 | SIに換算した数値 | 長さ | [Lu] | 量子長 又は未知なる粒子の直径 | 1[Lu] | 8.101x10−35 m(メートル) |
時間 | [tu] | 量子時間 又は未知なる粒子の振動周期 | 1[tu] | 2.702x10−43 s(秒) |
質量 | [Mu] | 量子質量 又は未知なる粒子の質量 | 1[Mu] | 7.372x10-51 Kg(キログラム) |
エネルギー | [Eu] | 量子エネルギー | 1[Eu] | 6.625x10−34 J(ジュール) |
温度 | [Tu] | 量子温度 | 1[Tu] | 4.797x10-11 K(絶対温度) |
*ここで量子エネルギーは、アインシュタインの質量とエネルギーの関係式;E=m・c2 を用い、mには量子質量を用いて算出した。またプランクの法則;E=h・$\nu$ を用い、$\nu$(振動数)を1としても、同一の値が算出される。
*量子温度に関しては、熱力学の運動エネルギーを変形した式;E=Kb・T を用いた。(Kbはボルツマン定数)そしてEには量子エネルギーの値を代入すると算出される。量子温度とは、SIの絶対温度1度に対して4.797x10ー11倍に当たる数値である。
表9ー2:SI単位に対する量子単位換算値
| 次元 | SI単位の数値 | 量子単位換算値 |
長さ | 1 m | 1.234x1034 [Lu] |
時間 | 1 s | 3.701x1042 [tu] (最大振動数) |
質量 | 1 Kg | 1.356x1050 [Mu] |
エネルギー | 1 J | 1.509x1033 [Eu] |
温度 | 1 K | 2.084x1010 [Tu] |
<プランク単位系に関する考察>
このように一覧表としてまとめ挙げて、全体をじっくり眺めていると、未知なる粒子の世界に潜む宇宙真理の断片が少しずつ垣間見えて来る。そこから各量子定数が我々の宇宙の根底で互いにどのような関係で連結しているのか、多少たりとも見えてくる。その主なものを分かりそうなところから考察していくことにしよう。
(1)量子長
この長さは、未知なる粒子の直径を表わしている。それと同時に光が1量子時間に進む距離でもある。したがって光の波長とは全て量子長の整数倍である。
(2)量子時間
光が量子長だけ進むに要する時間である。我々の世界では時間は連続的ではなく、量子時間単位でデジタルに刻まれている。地球での時間は1秒を基準単位としているので、光の振動数とは、1秒を量子時間で割った値が最大振動数となる。また未知なる粒子の振動周期でもある。
(3)量子質量
この質量が、未知なる粒子の質量を表わしている。そして、現存する全ての粒子(電子や原子、その他)はこの未知なる粒子が何らかの力関係により無数結合されたものであると考えられる。また、質量は非常に厳格で殆んど誤差を生じない。したがって、ある粒子が何個の未知なる粒子から構成されているかを容易に算出することが出来る。例えば電子の質量を未知なる粒子の質量で割れば、容易に未知なる粒子の数が算出される。
(4)光速に関して
SI単位系では、光速とは光が1秒間の単位時間に進む距離と定義している。しかし プランク単位系では、1量子時間に光が進む距離である。即ち”量子長=光速”となる。またこの量子長に、1秒間での最大振動数を掛けた値がSIの光速の値に一致する。
(5)量子エネルギー
エネルギーの単位で、我々の宇宙ではこのエネルギーの整数倍でしか存在出来ないようである。
(6)量子温度
量子温度は、絶対温度の1度を 2.084x1010 で割った数値で、温度もこの単位の整数倍だけが許される。
以上の考察はほんの序の口で、量子単位系に関しては更に深く探究する必要があるだろう。そこから我々のまだ知らない新しい知識が得られるかも知れない。
科学の進歩に於いて大切なものの一つに洞察力がある。洞察とは辞書を見ると「物事をよく観察しその本質に気が付き、物事の深部まで見通すこと」とある。例えばケプラーが、これまで公理とされていた惑星の円運動が楕円であることに気付いたこと。ニュートンが如何なる物体にもその質量に相当した向心力があることに気付いたことなどがあげられる。これ等の発見は、検証可能な数多くの観測結果から、その奥に秘められた検証不可能な世界の法則を見抜き、その世界から検証可能なデータが得られることを証明することでなされたものである。
このように人が見ることも触ることも聞くことも出来ない得体の知れない世界を洞察することは、新しい知識に到達するためには欠かせないものなのである。近年では、ボーアの原子仮説がよい例である。彼は色々な観測結果から、原子の世界では原子核の周りを電子が回転する際、複数の定常状態が存在しその軌道を回転してる場合は光を放射せず、軌道から別の軌道に遷移するとき光を放出するのである、という仮説を立て新しい知識を得ることができた。
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図9−1:洞察力と検証スクリーン
図に於いて、スクリーン上で検証可能な像AとBがある。検証可能な事実だけを根拠にする人々は、「AはBより大である」という事実を基礎として理論を構築していく。しかし真実は、図から明らかなように物体AはBより小である。だが真実は検証不可能である。その真実の世界を模索するのが洞察力の世界である。
A、現代科学の理論
検証スクリーンの前面からしか物事を観察することが出来ず、それで満足している研究者の世界である。このような人は、検証も出来ない真実には全く無関心である。したがって、スクリーンの背後にある見ることも感じることも出来ない真実を知らないまま、検証可能では在るが誤った実験事実と認識を土台にして理論を構築していくことになる。当然そのような理論が正しいとは思われない。
B、プランク単位系からの理論
検証スクリーンと洞察力の世界の両方を見渡すことが出来る研究者の世界である。このような研究者は、検証可能な多数の観測事実を総合的に正しく分析、解釈することで、検証不可能な世界をも予測し、自然界の奥底に潜む根本要素、根本原理を正しく理解し、そこからあらゆる自然現象を論理的、物理的に解明していく。歴史的にも科学の進歩は、洞察力に富んだ人々から築かれている。
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