物体(鉄や銅など)が熱せられると光を輻射(放射)することはよく知られている。光らない物体でも周囲には熱が輻射されている。一方、物体に光を長時間照射しているとそのエネルギーを吸収し徐々に暖かくなり、放置しておくと徐々に冷えていく。このような様々な
現象から、如何なる物体でも光を輻射し、且つ吸収するのではないかという知識に達する。更に物体を熱すると何故光を放ち、どのように放射されるのか、物体に吸収された光は物体内部でどのようになるのか、輻射と吸収は互いに関連性はあるのかなど、様々な疑問が湧いてくる。
キルヒホッフは、1860年に「光の放射と吸収」に関するキルヒホッフの法則を公表する。
輻射に関するキルヒホッフの法則 |
物体と輻射が共に熱平衡状態に有る時は、その物体からの輻射率と吸収率はその物体の特性には依存しない。そしてその量は等価である。
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即ち、真空中の温度が一定でその中の物体の温度も同一である時は、その物体から放出する輻射の量は、その物質が周りの空間から吸収する輻射の量と同一でその物質の種類に関係ないというのである。この時キルヒホッフは、黒体という新しい概念を導入し説明していく。
黒体とは全ての光波を吸収してしまう現実には存在しない物質である。
キルヒホッフは次のような考察を進めていく。
或る空間の内部に物体AとBが存在し物体AもBも空間も、全て同一温度で熱平衡状態が保たれているとする。この時のA及びBの輻射率と吸収率をそれぞれ Ea、Eb 及びJa、Jb とする。この時熱平衡状態が保たれているのであるから、各物体の輻射率/吸収率は等しくなければならない。即ち Ea/Ja = Eb/Jb が成立する。
ここで物体Bが黒体であったと仮定すると、Jb=1である。このことから次のような結論が得られる。
@ 温度が等しく熱平衡状態が保たれている場合においては、任意の物体の輻射率Enを吸収率Jnで割った値は黒体の輻射率Ebに等しい。即ち物体Nの材質には依らずEnとJnは一定である。
A 黒体の輻射率は、物体の温度と熱平衡状態にある真空中の光波の振動数のみに依存し、黒体が何で出来ているかには依らない。
図:6−5 空洞輻射
キルヒホッフが提案した黒体は、あくまでも仮定の物体で現実には存在しないものであった。しかし、実際に理論を構築していく過程においては、現実的な黒体に準じた理想的な物体が必要である。そこでキルヒホッフは空洞輻射なるものを考案し、この空洞輻射が黒体輻射と同等であることを説明し、その後の輻射問題の研究に大きく貢献することになる。
図について説明すると、ある形をし適当な大きさを有した耐熱容器Aがある。この容器の内部は空洞になっており真空であると仮定する。そして容器の一部に小孔Bを設ける。外部から光を与えた場合、容器内の光は内部の壁に反射され完全に吸収される。これは明らかに黒体と同等であると見倣すことができる。また、容器Aを外部から加熱し一定温度で熱平衡状態に達した時、小孔Bより出てくる光波は黒体が放射したものと同等である。このように理想的な容器から輻射される光波を空洞放射と呼ぶ。
十八世紀後半のドイツでは、産業の急速な発展に伴い、製鉄などの工業製品の生産量が飛躍的に増加してきた。その為製造、製作に必要な熔解、高温測定などのような高度な技術が要求されるようになる。又、その技術支援の裏付けとなる基礎物理学の研究も盛んとなる。一方、溶鉱炉で物体を熱して行くと、始めは赤色の光が見え始め、更に熱して行くと黄色から白色へと変わって行くことが知られていた。この事から必然的に、光の色の研究から溶鉱炉内の温度がより正確に測定出来るのではないかと考えられる。
空洞輻射の問題とは、周囲を全て耐熱物質で出来た壁に囲まれ、内部が空洞(真空)である箱を考え、その箱の外側から加熱し、一定温度に到達し熱平衡状態にある時、その空洞内部に充満している光波(電磁波)に関する研究のことである。
上記の箱の一部に小孔を開け、外側から加熱して行くと、一定温度での熱平衡状態を作りだせる。この時小孔より放出される光波のスペクトルの波長(又は周波数)と強度の関係を測定することで、特定の温度に対し決まった強度分布曲線が得られることが数多くの観測から実証された。その実験結果を図6−6に示す。
図 6−6 光波のスペクトル分布
このような実験室に於いて、色々な温度に対する分布曲線のグラフを作成しておくことより、溶鉱炉内の光のスペクトルを調べることで、正確な温度を知ることが可能となり、工業技術的な問題は達成出来た。しかし、与えられた温度に対し、何故このような規則的な分布曲線が得られるのかという単純な疑問が生ずる。即ち、空洞輻射の問題とは、上記の現象を物理学的に我々が理解出来るよう、理論的に説明して行くことである。
***特注:電磁波という言葉は使用しない***
本書では、現在一般の科学書で用いられている“電磁波”には不明な点が多いと考えているので(第12章の光の正体で解説)、その言葉の代りに“光波”、または可視光波、不可視光波という言葉を使用することにする。ようするに、電場と磁場が互いに誘導し合いながら光速で真空中を進んで行くなどという都合のよい考えは、あり得ないと見ている。
ある力学系の形の変化によって、その固有振動の振動数νが変化すると同時に、振動のエネルギーEも変化してくる。例えば振り子の紐の長さ、ギターなどの弦の長さ、ピストンの移動によるシリンダー内の体積などを変えた場合である。断熱変化に於いてピストンに外力を加え、シリンダー内の体積を小さくすると、分子の横方向の一回の往復運動は短くなるため波長λは短くなり、振動数νは増す、そしてシリンダー内の全エネルギーEも加えた外力分増加する。この際の振動数νと全内部エネルギーとの関係が一定の比になることが知られている。この比 E/$\nu$ を断熱不変量と言う。
E/$\nu$ = 一定
[ 例 ] シリンダー内の分子のエネルギーと振動数の関係。
(1)体積Vの変化に対する分子の振動数
ある体積Vを持つ箱が在り、その内部を1個の分子が一定の速さvで運動している。
@ 線状の箱の体積の断面積が分子の大きさと同一で、長さがL1であったとする(線の場合)。この時、箱の端から端まで分子が移動する時間がt1 であったら、t1=L1 / v である。そして、この時分子は箱の中の全空間を塗りつぶしたことになる。
このように、分子が箱の中を重複することなく全空間を塗りつぶした状態を、本例題では振動数$\nu$=1/2と定義する。従って、分子が往復した場合、2回塗りつぶしたことになるので振動数は1である。(振動数とは対象が何であるかで定義が異なるので注意を要する)
A 次に厚さは分子の大きさと同じで、長さはL1、幅がL2の箱を考えよう(平面の場合)。
この時1つの分子が箱の中の全空間を塗りつぶすに要する時間t2は、
t2=L1・L2 /v となる。
そして、この例での振動数の定義は箱の中の全空間を塗りつぶした時を1/2 としているのであるから、振動数1/2 に要する時間は、線の場合はt1、平面の場合はt2となる。t1を単位時間と置くと、平面の単位時間での振動数は、
$\nu$=1/2(t1/t2)=1/2・(1/L2) となり、体積が増加した分振動数は少なくなる。
B 次に厚さがL3、長さはL1、幅がL2の箱を考えよう。(立体の場合)
Aの場合と同様に考え、全空間を塗りつぶす時間は、t3=L1・L2・L3 /v となる。
そして、立体の単位時間での振動数は、
$\nu$=1/2・(t1/t3)=1/2・(1/L2・L3) 。
結論: 箱の中の温度が一定で速さが同一の粒子の振動数は箱の体積に反比例し、次式が成立する。
$\nu$=1/V 。または $\nu$・V=1 。そして1を定数kに置き換え $\nu$・V=k となる。
(2)エネルギーの変化と体積変化
ここではシリンダーの外部から力を加えた際、内部エネルギーの変化と体積の変化との関係を考察していこう。
今、シリンダーに外部から一定の力Fを加え、ピストンをLの距離だけ押し下げたとしよう。この時ピストンの面積Sは一定であるから、変化した体積はΔVだけ減少しVになる。また、内部のエネルギーの増加ΔEは、体積の場合とは逆にΔEだけ増加しEになる。
熱力学の断熱過程における内部エネルギーと体積の関係式は次式で表せる。
T・Vγ―1 = k‘ ここで、T:温度、γ:断熱指数、k’:定数
断熱指数γは、定数であるから上式は T・V・k‘’= k’ と置き換えられ、 更に
T・V = k‘“ となる。
また、内部エネルギーは E=3/2・n・R・T で表せる。 n:モル数、R:気体定数 。
n=1 と置き、Rは定数であるから T=k“”・E 、よって k“”・E・V=k‘“ で更にk“”は定数であるから、 E・V = k としてよい。
よって前記(1)における式 $\nu$・V=1 より、 E /$\nu$ = k(一定) を得る。
その当時(1850年頃)、輻射(光)は粒子ではなく波であると認識されており、この波が空洞内の壁に及ぼす圧力Pは、
P= 1/3・u u;空洞内のエネルギー密度
であることが、実験的にも精密に測定され、ボルツマンにより理論的にも証明されていた。
シュテファン(1835〜1893)は空洞内が熱平衡状態(T)にあるときのエネルギー密度が、温度(T)の4乗に比例することを実験的に発見した。後に弟子のボルツマンが理論的に、この法則を導きだす。
以下に、この式の算出方法を示そう。
熱力学の内部エネルギーUの変化dU と、熱量Qの変化dQと仕事Wの変化dWとの関係は、
dU=dQ+dW また dW=―p・dV ここでpは一定の圧力、dVは体積変化。
そして、エントロピーSの変化dSと、温度が一定の際の熱量の変化dQの関係は、
dQ=T・dS である。
よって、 dU=T・dS―p・dV 。
両辺をdVで割って、 u=T・(dS / dV)―p
また、熱力学関数におけるマクスウェルの関係式:(∂S/∂V)T =(∂p/∂T)V と輻射の圧力 p=u/3 を用いて、
u=T・(dp / dT)―p =1/3{T・du/dT}―u/3 を得る。
この式を計算して、 (1/u) du =(4/T) dT 、
log u =4logT+C よって u=σ・T4 を得る。
ウェーバー(1843〜1912: 磁場の単位のウェーバーとは別人))は、高温物質から放射される光波の線スペクトルの詳細な実験データを調べていた。そして1888年「光波はその振動数の強度が最高値になる位置と、温度の比が一定である」ことを公表する。
即ち、($\nu$max) / T = 一定 。
図6−6:で説明すると、溶鉱炉内から発せられる光波のスペクトル強度の最大値Emaxは、温度により規則的に変位することに気づく。
ヴィーン(1864〜1928)は、上記のような幾つかの既存知識や彼独自の経験則から、断熱的な体積の変化に対し、振動数と温度の変化の関係が、次式で表せることを見出す。
(1)速度がvで、長さLの立方体の箱のなかをx軸に平行に運動する粒子が、1往復するに要する時間をtとし、その時の振動数を$\nu$=1とすると、長さが2Lの時は2・tの時間を要し、振動数は$\nu$=1/2である。これより $\nu$・L =一定 。
これを変形し、log $\nu$・L =logν + log L = k 、 log$\nu$=―log L+k 。
更に 1/$\nu$ ・d$\nu$ =―1/L ・dL を得る。
そして、立方体の箱をx、y、z、軸に対し等しい長さだけ縮小した場合の体積Vの変化と振動数の関係は、V=L3 であるから
dV=3L3・(1/L)・dL =3V(1/L)dL より 1/L・dL= 1/3V・dV よって、
1/$\nu$ ・d$\nu$ = ―1/3V・dV を得る。
(2)熱力学の内部エネルギーUと体積Vとの関係は、 U= u・V ここでuはエネルギー密度。
dU=u・dV +V・dn 。また断熱過程での内部エネルギーの変化は
dU=―p・dV=―u/3・dV であるから、 u・dV +V・dn = ―u/3・dV
よって、4u・dV = ―3V・du 。
そして、前記のシュテファンの法則から、内部エネルギー密度は温度の4乗に正比例するから、
u=T4 とおいて、du=4T3・dT 。 これを代入し、
4T4・dV =―3V・4T3・dT 。 1/3V ・dV =―1/T・dT を得る。
(3)以上2式の結果から次の式を得る。
d$\nu$/dV =― $\nu$/3V , dT/dV =― T/3V
この式から、d$\nu$/$\nu$ = dT/T 、積分すると $\nu$/T = 一定 を得る。
即ち、温度の上昇に比例して、光の振動数も多くなることが分かる。このことは温度の低い光が振動数の少ない赤色であるのに対し、温度が高くなるに従い振動数の多い青色に変わっていくという経験則からも知ることができる。
また、振動数×波長(λ)=一定(光速)であることから、
λ×T=一定 を得る。
この式が‘ヴィーンの変位則‘と呼ばれるものである。温度により、その際の振動数の強度の最大になる位置($\nu$max)が規則的に変位することからその名がついた。
ヴィーンは、溶鉱炉内から発せられる光のスペクトル曲線がどのような関数により定式化出来るかを考えた。
まず図における変位則の曲線から、ある振動数に対するエネルギー強度Ejの値は、その振動数と熱平衡状態にある温度のみに依存している。
更に、前記の断熱不変量(E/$\nu$)=一定 であり、($\nu$/T)=一定 であることから、空洞内の固有振動数$\nu$と$\nu$+d$\nu$の間にあるエネルギーU($\nu$、T) は
U($\nu$、T)d$\nu$ = F($\nu$/T)・$\nu$・d$\nu$ ・・・(a1式)
なる式を薄い根拠を頼りに導く。
F($\nu$/T) は温度と振動数の値によって変化する関数。
しかし、この定式から実験結果の曲線を得ることが出来ないことは明らかである。
上記の公式で現れた関数 F(ν/T)を決めるには、熱力学的考察だけでは解決できない。そこで彼は、空洞輻射に関するスペクトル分布が、その当時よく知られていた、分子運動論におけるマックスウェルーボルツマンの分布則(数学的予備知識 6、7、4を参照)によると、温度Tで熱平衡状態にある気体分子が速度(運動エネルギー:1/2・mv2 =ε(v) )にある確率は、次式で表せる。
F(v)=A・{ε(v)/kT}・exp{―ε(v)/kT} 、 ここで Aは定数 。
この式に着眼し、関数 F($\nu$/T) にこの式を利用し、且つ測定値に合うように変形し次のような式を提案する。
F($\nu$/T)=kbβexp{―β$\nu$/T} β:任意定数 (後に β=h/kb となる)
この式を代入し、空洞輻射のエネルギー密度に関するヴィーンの公式を得る。1896年のことである。
U($\nu$、T)d$\nu$= φ($\nu$)・exp{―ε($\nu$)/kbT}d$\nu$ ・・・(a2式)
この式から固有振動子の振動数$\nu$と$\nu$+d$\nu$の間にあるエネルギーU($\nu$、T) は、
U($\nu$、T)= φ($\nu$)・exp{―ε($\nu$)/kbT} を提案する。
a1式とa2式を比較し、
φ($\nu$) =k1・$\nu$ 、 ε($\nu$) =k2・$\nu$ と置ける。
よってU($\nu$、T)= k1・$\nu$・exp{―k2・$\nu$/kbT} ・・・(a3式)
を得る。 ここでk1 とk2は定数。
また、ε($\nu$) を振動数$\nu$と$\nu$+d$\nu$の間にある振動子の平均エネルギーとし、その個数を n($\nu$) と置くと
U($\nu$、T)= ε($\nu$)・ n($\nu$)= k1・$\nu$・exp{―k2・$\nu$/kbT} を得る。
更に、 k1・$\nu$ =α 。 k2・$\nu$/kb = R 。 とおくと
U($\nu$、T)= α・exp{―R / T} となる。
これがヴィーンの輻射公式と呼ばれるものである。
このようにして導入されたヴィーンの公式は、実験より得られたスペクトル曲線とは多少異なり特に振動数の低い領域では全くダメなのである。またマクスウェルの電磁気学を無視しており、更に輻射エネルギーに対し分子運動論を用いたのであるからあまり評判の良いものではなかった。とは言っても振動数νが高い領域($\nu$/T >1011)に於いては、実験によって得られたスペクトル分布曲線とよく一致するのである。従って真理の一面を含んでいることも確かである。
レイリーとジーンズもその当時の多くの科学者がそうであったように、この空洞輻射の問題に取り組んでいた。そしてヴィーンの提唱した式に対しては、実験データに合わせるため恣意的に定式化したものであり、物理的には受け入れ難いと厳しく批判する。また、振動数の小さい領域では全く一致しないのである。そこで当時既に知られていた統計力学の「エネルギー当分配則」から、この問題を論考していくことになる。
(1) 1次元の波動(線)の場合
ここでは弦の振動に関し調べてみる。長さLの紐が両端を固定して張られた、下図のような場合を考えよう。
図 6、7:左図ー1次元の節と振動数の関係。 右図ー実測値との比較
紐をはじいた際、半波長を単位にその整数倍の時、安定した定常波をつくることが知られている。この際の(節(ふし)の数+1)をs(s=1,2,3、・・・)とすると、その波長(λ)と(s)の数を掛けた値が、長さLの2倍になることがわかる。
s×λ=2L
また紐を伝わる速さをvとし、振動数を$\nu$とすると
v=$\nu$・λ より、各固有振動の数は、 $\nu$=s・v/2L となる。 このことより、基本振動数を$\nu$1=v・/2Lとおくと、基本振動数の整数倍に対応するので、sを求めることで固有振動の数も求まる。
そこで、振動数$\nu$と$\nu$+d$\nu$の間にある固有振動の数 D($\nu$)d$\nu$は、弦の微小長をdsで表わすと、
D($\nu$)d$\nu$=ds=2L/v・d$\nu$ を得る。
(2)3次元(立体)の場合
レイリーとジーンズは、空洞輻射の問題を解決するため、既に知られていた弦の固有振動の現象を類推して用いた。即ち空洞内の輻射を光波の方程式に従う場と考え、この問題に取り組む。空洞内はx、y、zの3次元空間とみなせるから、前記の1次の弦の振動数を拡張し3次の固有振動数を求めてみよう。
まず空洞内輻射は、光波とみなすので速さは光速(c)となる。そして、sと$\nu$とは正比例の関係にあるからsの代わりに$\nu$の空間を考えることができる。また空洞は球状空間と考え、振動数$\nu$と$\nu$+d$\nu$の間との体積は、V=4$\pi$ν2dνであり、sは正の数であるから第一象限だけを考えれば良く、その体積の1/8となる。そして節目の数に対しては、その立体的な碁盤目の数に対応出来るので、その体積は V‘=(c/2L)3 である。よって求める固有振動数は
D($\nu$)d$\nu$= V/(8・V‘) = (4$\pi$L3)/c3 ・ $\nu$2d$\nu$ である。
また、光は横波で偏光という性質を持っていると考えられており、その結果光の場合は上式の2倍になる。
よって、 D($\nu$)d$\nu$= (8$\pi$L3)/c3・$\nu$2d$\nu$ となる。
また、このような空洞内に於いて熱的平衡状態にあるとき、エネルギー等分配の法則に従えば、おのおのの固有振動には kb・T ずつ分配されているのであるから、$\nu$と$\nu$+d$\nu$との間にある振動数の光の全エネルギーは
E($\nu$)d$\nu$=kbT・D($\nu$)d$\nu$= (8$\pi$L3)/c3 kbT・$\nu$2 d$\nu$
となる。そしてその輻射のエネルギー密度は、全エネルギーを空洞内の体積L3 で割ればよいから
u($\nu$)d$\nu$= 8$\pi$/c3 kbT・$\nu$2d$\nu$
これがレイリー・ジーンズの輻射公式である。
この輻射理論は、エネルギー等分配の法則を認める限り完全に正しいのであるが、電磁理論に従えば光波の波長は無限分割可能なのだから、振動数も無限となり、それに従い上式のエネルギー密度も無限となってしまう。しかし現実には、空洞内のエネルギーは有限であり経験則と異なる。また、振動数の高い領域では実験値とは全く合わないのである。ただ温度に比べ振動数が少ない範囲 $\nu$/T では、実験値とよく一致しているのである。
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