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17、電磁気学 

17、1 電気・磁気の歩み 

 物と物が摩擦により熱が発生することは、大昔から知られていた。電気の存在もこの摩擦から知られるようになる。ギルバート( 1540−1603 )はコペルニクス説を信じており、特に地球全体が磁石になっているとした説は有名である。また摩擦により電気を帯びる物質(不導体)と帯びない物質(導体)があることに気付いていた。この現象がギリシャ語のエレクトロン(琥珀)にちなみ電気(electricity)の語源となる。1730年、フランスのデュ・フェは皮でガラスを擦ったとき生ずる電気と、樹脂を擦ったとき生ずる電気とは互いに引き合うが、同一電気同志は反発し合うことに気ずいた。

*ガラス電気:電気流体過剰(正電気)
*樹脂電気: 電気流体不足(負電気)

 この事実から電気には二種類あるという二流体説をたてる。
 1747年ころ、フランクリン(1706−1790)は、この現象は電気には正と負の2種類存在すると解釈できるが、一方電気は1種類で過剰な物質は正で、不足した物質は負であるとも解釈できるとし、彼は1流体説を主張する。
 この問題は、しばらくの間決着がつかなかったが、その後、電気分解の現象、陽子や電子の発見などから現在では、正と負の電荷がある二流体説がほとんど公理として認識されている。
 鉄や銅などの導体の金属に、帯電した導体を近ずけると、金属の近ずけた周辺に電気が誘導される現象(静電誘導)は古くから知られていた。オランダのライデン大学のミュッシェンブルークは、静電誘導の現象を利用して、ライデン瓶を考案する。現在のコンデンサである。
 帯電した物質が距離を隔てて何故引き合ったり、反発したりするかの原因は、18世紀中ごろ、物体の放つ雰囲気のためであろうと理解されていた。その後ニュートン力学が広まると遠隔作用に因るものかもしれないと解釈されるようになる。
 電気力の定量的な変化の法則は、1785年クーロンにより「クーロンの法則」として確立される。この法則は二つの帯電体の電気力はその距離の二乗に反比例し、帯電の量の積に比例するというものである。クーロンの法則が認められてより、電気力は数学的に取り扱い可能となる。磁気力に対してもクーロンの法則が成立することが確認される。
 1786年、ガルバーニ(1737−1798)はカエルの筋肉に2種類の金属を触れると、カエルが痙攣を起こすことを発見。彼はこの現象を動物電気であると主張する。
 イタリアのボルタ(1745−1827)は、1792年ころガルバーニの電気を更に詳しく調べ、2種類の異なった金属(例えば、銅板と亜鉛板)を接触させると電気が生ずることを発見。その現象を利用して、二つの板の間に塩水を浸した布(絶縁体)を挿入し、その組み合わせを幾重にも積み重ねて両端に触ると発生する電気が長続きした。ボルタの電堆、即ち電池の発明である。
 イギリスのカーライル(1768−1840)は、1800年、ボルタの電堆を使った色々な実験をしていた。水を満たしたガラス瓶に、電堆の両極に接触した銅線の両端を浸したところ、片方から泡が生じた。調べたところ水素ガスであった。銅線の代わり白金線で行ったら酸素ガスが生じた。電気分解の始めである。
   このような電堆が知られるようになると、色々な実験に利用されるようになる。エルステッドは、1820年、電流と磁石の関係を調べていた。電線に電気を流すとそばに置いた磁石が電線とは直角に変化することを発見、そこから電気を流すとその線を中心に渦巻き状に磁場が生ずるのであると結論する。
 その知らせを聞いたアンペールは更に詳細な実験を行った。その結果1822年に、「右ねじの法則」:電気の流れる方向に右ねじの先を合わせ、右回転に磁場が生ずるという法則、「アンペールの法則」:2本の電線を少し離し平行に並べ、両方とも同一方向に電気を流した際電線同士は引き合い、反対方向に流した時は反発するという法則、「分子電流説」:電線をコイル状にして電気を流すと、内部が磁石と同じ働きをしたことから、要素磁石は複数の小さな環状電流よりなるという考えなどを公表する。
 オームは、電気磁気に関する様々な実験と観測を行い、電気回路内に流れる電流の強さ(I)は電池の起電力(V)に比例し、回路内の全抵抗(R)に反比例することを示した。これがオームの法則(I=V/R)である。1826年のことである。更にオームは、導線の抵抗は長さに比例し、断面積に反比例することおよび比例常数(電気伝導度)を掛けた値であるを見出だす。更に電気伝導度は導線の種類により異なることを示し色々な種類の導線の電気伝導度を調べる。
 ファラデーは1833年、電気分解の法則を公表する。
@第一法則:電気分解により電極に発生した物質の量は、流れた電気量に比例する。
A第二法則:電気分解の際、一定量の電気により発生する物質の質量は、その物質の当量に比例する。(当量とは、例えば二つの物質A:1グラムとB:8グラムが化学反応により化合物Cに変化した際、Aが1グラム、Bが8グラム 要したのであるから、Bの当量は8となる)
 電気分解の実験などから、電気量は「電気の原子」が存在し、その整数倍で測れるのではないかと推察する研究者も現れたが、ファラデはその件に関しては何も述べていない。
 エルステッドが電流と磁石の関係を発見し後、ビオとサバールは磁石と磁界が及ぼし合う力の量的な関係を調べ、電線の周りに生じた磁界(H)は、電線に流した電流(I)に比例し、電線からの距離(r)の二乗に反比例することを確認した。ビオ・サバールの法則である。


17、2 力線と電磁誘導の歩み 

 ファラデーは不導体(絶縁体)の両面に接した金属板に一定の電圧をかけた際、不導体の種類により生ずる電荷の量が異なっていることから、これまで正しいと考えられていた遠隔作用の概念を捨て、電気力は空間中に存在する電気力線を介して行われるという近接作用を提案する。例えば、不導体を真空以外に選んだときは、誘導される電気量は真空の時より増えた。
 即ちファラデーはこの現象に対し、絶縁体は単に両極板の間で単純に電荷が作用しているのではなく、電気作用の伝達に何らかの役割を果たしているに違いない。この絶縁体の内部に作用する何らかの力に対し、彼は電気力線という概念を提案した。この力線は、正から負の電荷に向かい、電気力の働く方向に沿って絶縁体の内部を走って作用しているのではないかと想像した。そして電荷とは(この当時電荷とは架空の概念にすぎなかった)力線が入ったり出たりする点空間にすぎないと考えた。この考えは当時の学者からはあまり評判がよくなかったようである。しかしこのような電気力線を用いるとクーロンの法則をうまく説明できた。即ち絶縁体の比例定数;ε とした際、絶縁体の種類により比例定数を計測することによりクーロンの法則の式が成立する。そして真空(エーテル媒体)を絶縁体と仮定し、比例定数を=1 とおけば、矢張り式は成立する。今日の電場の概念である。
   磁気力に関しては静電気力と似たような特徴があるため同じ様に研究された。下敷きの上に鉄粉を散りばめ、磁石の両極を下に当てることによりその磁力線を見ることが出来る。この事実からファラデーは鉄粉の一粒を要素磁石(S極とN極が一対になっている)と見做し、その要素磁石同士が引き合って線上の鎖を作る。その線を磁力線として想像した。そして線の密集した部分は磁力が強く疎の部分は弱いとした。
 電気力線に関しても似た方法で思考を巡らしていく。+極板とー極版に挟まれた絶縁体の内部では要素電気が誘導される。互いの要素電気は引き合い鎖状の線を作る。この線が電気力線に相当する。+電荷とー電荷を有した絶縁体を、真空中で多少距離をおいて設置すると中間のエーテル(この当時真空はエーテルで満たされていると考えられていた)に要素電気が誘導され電気力線が生ずる。力線の密の部分は電気力は強く、疎の部分は弱い。片方の絶縁体のみが置かれた場合は、その絶縁体を中心に力線は放射状に拡散し、遠方ほど線密度は疎となる。
 しかし電気力と磁力とは全く同じではなく、大きな違いもある。なんといっても大きな相違は、電気の+極とー極はそれぞれ独立に存在し移動できるが、磁気のN極とS極は必ず対になっており、単独で存在不能である。また単位電荷は実在するが、磁荷は実在しない。このような様々な現象から、要素磁石は小電荷の回転運動によるもので、外面に現れる磁場は要素磁石の総合的な結果ではないかと想像されるようになる。
 1834年には、レンツがこれまで知られている現象を総合的にまとめ上げ、レンツの法則を公表する。即ち、環状に閉じられた電線に、磁石のN極(S極でもよい)を近ずけると磁力線の数が増加する。するとその増加する磁力線を打ち消すように電線内に起電力が生ずる。
 エルステッドの発見後ファラデーもこの知らせを聞き、電流により磁場が生ずるのであればその逆もあるのではないかと考え、当時の様々な研究者および彼自身が行った実験から次のような現象を確認した。しかしその解釈には様々な意見があり、どれが正しいかの明確な判断が未定であった。図17−1を参照しながら説明しよう。




               図:17−1 電磁誘導の現象  



図17−1の(1)においてーー d:電線、i:電流、b:磁力線。
図17−1の(2)においてーー C:コイル、a:磁石、N:磁極、S:磁極。
図17−1の(3)においてーー a:永久磁石、K:電流計。
図17−1の(4)においてーー P:電源、w:スイッチ、R:環状の鉄棒、C1:第一コイル、C2:第二コイル。
図17−1の(5)においてーー Cn:第nコイル。
図17−1の(6)においてーー P,Q:環状鉄棒の両極、a:永久磁石。
図17−1の(7)においてーー 赤小円:手前から奥に向かう磁力線、R:スライダー。

(1)一直線に張った電線に電気を流すと、線を中心に右ねじ方向に渦状の磁場が生ずる。電気を流している間磁場は存在する。そして磁場の強さは電流の強さに比例し、電線からの距離の二乗に反比例する。<図17−1の(1)>
(2)電線で複数の輪を作り(コイル)電気を流すと磁場が生じ、内部に鉄棒を差し込むと棒磁石となる。<図17−1の(2)>
 この現象から電気の流れにより磁力線が誘導され、磁力線にしたがって磁石が生じ、その磁石は常にS極とN極が対(要素磁石)になっており、電気の極とは異なり単独では存在できないと理解されるようになる。
(3)コイルの両極に電流計を接続し、コイル内部に永久磁石を接近させる。<図17−1の(3)>
@ 永久磁石が静止の時は電流計はゼロで静止している。
A 磁石のN極を下にしてコイルの内部に差し込むと電流計が動き、磁石を移動している間電流計はゼロではない。
B 磁石を止めると電流計はゼロで静止する。
C 次に磁石を引き抜く方向に移動すると、電流計は先ほどと反対方向に動く。磁石を止めると電流計はゼロに戻り静止する。
 この現象から磁場の時間的変化により、電線内に電流が誘導され、磁場の強さが変化してない時は電流は生じない。また磁石を近ずける時と離す時では電流の向きが反対になると理解される。
(4)鉄の輪型を用意し、片側半分に電線を巻き一時コイルとし、両極に電池を接続する。もう一方の半分にも電線を巻き二次コイルとし、電流計を接続する。<図17−1の(4)>
@ 一次コイルに電気を流すと鉄の輪は、磁石となることは説明した。その時電流計が動いた。電気を流し続けると電流計はゼロで静止した。相互誘導
A 次に一次コイルの電源を切った時、二次コイルの検流計が前回とは逆の方向に動いた。しかしすぐにゼロに戻り静止した。自己誘導
 この現象から、環状の鉄棒の内部では磁力線が生じているが非常に小さな要素磁石が誘導され、二次コイルに電流が誘導されたと理解された。そして輪全体としては要素磁石のN極とS極が打ち消されるため磁力線の誘導は帳消しされる。
 電源を切断した際は磁場の変化は逆向きになるため電流も反対に流れる。
(5)複数の鉄の輪を用意し、<図17−1の(5)> のように一次コイルからN次コイルまでつなぎ、最後に電流計を接続した。一次コイルに電気を流した時も止めた時も、電流計の針は前記(4)と同様な動きをした。電磁エネルギーの輸送原理の芽生えである。
 この現象から、電場と磁場とが互いに誘導し合ってエネルギーを搬送するという思想が定着する。
(6)一端が切断された鉄の輪の中央に磁石を急接近させると、切断された両極に火花が生ずる。<図17−1の(6)>
 次に切断された両極に検流計を接続し、同様の操作を施すと火花は生じなかった。その代わり検流計の針がふれた。
 これ等の現象から、磁場の時間的変化により電気が流れることは間違いないことが確認された。そして火花が発生したのは、切断された両極間に強い電位差が生じたためであると理解された。即ち、磁場の変化により電線内に電場が誘導され、その電場により電荷が移動したのであると解釈された。
<私見>しかし、この解釈はとても危険である。ファラデーの錯覚の節(17,5)で解説する。
(7)U字型の鉄製のレールの一端に、<図17−1の(7)>のようにスライダー(鉄棒)を置く。また、下をN極、上をS極とした磁場を与える。またAとBの間に電流計を接続する。
@ スライダーを速さvで移動すると検流計が動き、スライダーを止めると針はゼロに戻る。スライダーを逆方向に移動すると検流計の針は、先程とは逆に振れる。
A 次にスライダーはそのままの状態で磁場の強さを増していくと、検流計の針は動き、増すのを停止すると針はゼロに戻る。磁場を弱くすると針は先ほどとは逆方向に振れる。
 この現象を分析すると、スライダーを矢印の方向に物理力により移動させると、内部の電荷が矢印の方向に移動する。その電荷は右手の法則にしたがいB方向に力を受け移動する。即ち左回転の電流が誘導される。次に磁力を強く変化させた時は、上記の(3)の場合と同様で閉回路の中を回転する電流が生ずる。



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