物と物が摩擦により熱が発生することは、大昔から知られていた。電気の存在もこの摩擦から知られるようになる。ギルバート( 1540−1603 )はコペルニクス説を信じており、特に地球全体が磁石になっているとした説は有名である。また摩擦により電気を帯びる物質(不導体)と帯びない物質(導体)があることに気付いていた。この現象がギリシャ語のエレクトロン(琥珀)にちなみ電気(electricity)の語源となる。1730年、フランスのデュ・フェは皮でガラスを擦ったとき生ずる電気と、樹脂を擦ったとき生ずる電気とは互いに引き合うが、同一電気同志は反発し合うことに気ずいた。
*ガラス電気:電気流体過剰(正電気)
*樹脂電気: 電気流体不足(負電気)
この事実から電気には二種類あるという二流体説をたてる。
1747年ころ、フランクリン(1706−1790)は、この現象は電気には正と負の2種類存在すると解釈できるが、一方電気は1種類で過剰な物質は正で、不足した物質は負であるとも解釈できるとし、彼は1流体説を主張する。
この問題は、しばらくの間決着がつかなかったが、その後、電気分解の現象、陽子や電子の発見などから現在では、正と負の電荷がある二流体説がほとんど公理として認識されている。
鉄や銅などの導体の金属に、帯電した導体を近ずけると、金属の近ずけた周辺に電気が誘導される現象(静電誘導)は古くから知られていた。オランダのライデン大学のミュッシェンブルークは、静電誘導の現象を利用して、ライデン瓶を考案する。現在のコンデンサである。
帯電した物質が距離を隔てて何故引き合ったり、反発したりするかの原因は、18世紀中ごろ、物体の放つ雰囲気のためであろうと理解されていた。その後ニュートン力学が広まると遠隔作用に因るものかもしれないと解釈されるようになる。
電気力の定量的な変化の法則は、1785年クーロンにより「クーロンの法則」として確立される。この法則は二つの帯電体の電気力はその距離の二乗に反比例し、帯電の量の積に比例するというものである。クーロンの法則が認められてより、電気力は数学的に取り扱い可能となる。磁気力に対してもクーロンの法則が成立することが確認される。
1786年、ガルバーニ(1737−1798)はカエルの筋肉に2種類の金属を触れると、カエルが痙攣を起こすことを発見。彼はこの現象を動物電気であると主張する。
イタリアのボルタ(1745−1827)は、1792年ころガルバーニの電気を更に詳しく調べ、2種類の異なった金属(例えば、銅板と亜鉛板)を接触させると電気が生ずることを発見。その現象を利用して、二つの板の間に塩水を浸した布(絶縁体)を挿入し、その組み合わせを幾重にも積み重ねて両端に触ると発生する電気が長続きした。ボルタの電堆、即ち電池の発明である。
イギリスのカーライル(1768−1840)は、1800年、ボルタの電堆を使った色々な実験をしていた。水を満たしたガラス瓶に、電堆の両極に接触した銅線の両端を浸したところ、片方から泡が生じた。調べたところ水素ガスであった。銅線の代わり白金線で行ったら酸素ガスが生じた。電気分解の始めである。
このような電堆が知られるようになると、色々な実験に利用されるようになる。エルステッドは、1820年、電流と磁石の関係を調べていた。電線に電気を流すとそばに置いた磁石が電線とは直角に変化することを発見、そこから電気を流すとその線を中心に渦巻き状に磁場が生ずるのであると結論する。
その知らせを聞いたアンペールは更に詳細な実験を行った。その結果1822年に、「右ねじの法則」:電気の流れる方向に右ねじの先を合わせ、右回転に磁場が生ずるという法則、「アンペールの法則」:2本の電線を少し離し平行に並べ、両方とも同一方向に電気を流した際電線同士は引き合い、反対方向に流した時は反発するという法則、「分子電流説」:電線をコイル状にして電気を流すと、内部が磁石と同じ働きをしたことから、要素磁石は複数の小さな環状電流よりなるという考えなどを公表する。
オームは、電気磁気に関する様々な実験と観測を行い、電気回路内に流れる電流の強さ(I)は電池の起電力(V)に比例し、回路内の全抵抗(R)に反比例することを示した。これがオームの法則(I=V/R)である。1826年のことである。更にオームは、導線の抵抗は長さに比例し、断面積に反比例することおよび比例常数(電気伝導度)を掛けた値であるを見出だす。更に電気伝導度は導線の種類により異なることを示し色々な種類の導線の電気伝導度を調べる。
ファラデーは1833年、電気分解の法則を公表する。
@第一法則:電気分解により電極に発生した物質の量は、流れた電気量に比例する。
A第二法則:電気分解の際、一定量の電気により発生する物質の質量は、その物質の当量に比例する。(当量とは、例えば二つの物質A:1グラムとB:8グラムが化学反応により化合物Cに変化した際、Aが1グラム、Bが8グラム 要したのであるから、Bの当量は8となる)
電気分解の実験などから、電気量は「電気の原子」が存在し、その整数倍で測れるのではないかと推察する研究者も現れたが、ファラデはその件に関しては何も述べていない。
エルステッドが電流と磁石の関係を発見し後、ビオとサバールは磁石と磁界が及ぼし合う力の量的な関係を調べ、電線の周りに生じた磁界(H)は、電線に流した電流(I)に比例し、電線からの距離(r)の二乗に反比例することを確認した。ビオ・サバールの法則である。
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