我々は、前記(6,4 気体分子運動論)で、気体中の分子一つが持つ運動エネルギーが以下の式で表せることを学んだ。この式は、長年の多くの経験にも耐え、理論的、定量的にも検証されたもので、ここでも正しいと見做して議論を進めていこう。
1/2・m・v2=1/2・Kb・T ・・・(9−1)式
この式で、 mは分子一個の質量 。 vは分子の速さ。Tは絶対温度。Kbはボルツマン定数である。
<物理的解釈>
次に、この式の物理的意味を理解しよう。
ある閉じられた体積V の系を考え、その内部の温度が絶対温度でT度とする。系内には質量mの気体分子が複数=Na 個存在する。そして、この複数の分子は実際には個々独立の異なった速度を持つがその平均値をとって、速さはvと定める。
次に、一つの分子(mj)に着眼すると、温度Tの内部におけるその分子の運動エネルギーは、温度Tにボルツマン定数を掛けた量である。また、式から容易に、速さvの二乗がTに正比例していることが分かる。即ち、分子(mj)の速さが変化すると、絶対温度がボルツマン定数を掛けた量だけ変化するのである。
<プランク単位系からの考察>
この式をプランク単位系から考察するとどうなるだろうか。
まず、左辺のm・v2は エネルギーE を表しているから この式は次式で表せる。
E=Kb・T ・・・(9−2)式
そしてプランク単位系では Eu = Kb・ Tu となる。
また、量子エネルギーは Eu = Mu・c2 である。
それではさっそく(9.2)式に、プランク単位系からの数値を代入してボルツマン定数がどのような値になるか調べてみよう。
Kb = Mu・c2 / Tu
= 7.372 x10−51 (Kg)・ {2.998x108}2
(m /t)2 / 4.797x10−11 (K)
= 1.3812 x10−23 (J/K)
以上の結果は観測された数値とほぼ一致しており、プランク単位系の数値からボルツマン定数が論理的に算出されることが証明された。即ち、プランク単位系から観察した際、1つの未知なる粒子が光速に達したとき持つエネルギーと、ボルツマン定数に量子温度を掛けた値とが等しいということである。
<量子温度>
上記の考察は、その数値の一致から、ほぼ正しいと認めてよいだろう。そこから量子の世界の奥底に秘められた宇宙真理の断片が見えてくる。
@ 未知なる粒子が光速に達すると、その粒子の持つ内在エネルギー(本書では累積エネルギーと呼んでいる)を量子ゆらぎ(波)として宇宙空間に1個放射する。その時未知なる粒子の累積エネルギーは=0となり絶対速度が=0 となる。
A 放射された1個の量子ゆらぎは空間の温度を、{ボルツマン定数x量子温度}上昇させる。仮に未知なる粒子が光速に達しない場合は、速さが増しても内在エネルギーとして蓄積され、量子ゆらぎを放射しないので空間の温度は上昇しない。また、空間を伝播している量子ゆらぎが分子に衝突し吸収されると、分子の内在エネルギーは増加するが、量子ゆらぎは消滅するため空間の温度は低下する。
B このことから、温度とは空間内の量子ゆらぎの数によってのみ測られる量であると結論できる。したがって、現在正しいと認識されている「熱とは、分子の運動に起因する」という説明は誤まってはいないが、厳格には正しくない。即ち、熱学では閉じられた系内の分子の運動エネルギーの強弱で温度が測られると説明されているが、プランク単位系の世界では輻射熱は空間内に存在する量子ゆらぎの数だけで温度が決定される。そして物質熱は粒子に内在する累積エネルギーによってのみ温度が決定される。これが熱に対する正しい解釈である。
<練習問題>
** 気体定数 R=8.314472 (J・mol-1・K−1 ) を、プランク単位系の数値から論理的に算出できることを証明せよ。 **
ヒント:気体定数の次元式は ”L2・M・t−2・T−1・N−1” である。各物理次元にプランク単位系の数値を代入せよ。
ここで、L;長さ。M;質量。t;時間。T;温度。N;モル数。
又、N(モル数)を、ボイル・シャルルの法則と分子運動論からどのような数値になるか論理的に説明することが重要である。
[結言]
以上の論考が、熱力学の新しい真理として科学の世界に定着するのか、それとも日の目を見ることなく、歴史の塵の下に埋もれてしまうのか、それは今後の科学の進歩が正しい方向に進むか、それとも誤った方向に進むかで決まることになる。
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